トマトを始めとしたさまざまな野菜、果物のおいしさや栄養価値を活かしたものづくりを強みとするメーカー、カゴメ。「トマトの会社から野菜の会社に」というビジョンを掲げ、「野菜といえばカゴメ」とすぐに想起してもらえるような存在になれるよう目指しているという。
同時に、サステナブルな取り組みを数多く実施しており、ここでは、野菜由来の商品を扱うカゴメならではの取り組みについて紹介していきたい。
「野菜」に関連する事業を通じて社会課題解決の力になりたい
カゴメの具体的な取り組みを紹介する前に、サステナブルな思いについて担当者に聞いた。
「当社は『食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業』を目指しています。当社が解決すべき社会課題とは、これからさらに関心が高まる『健康寿命の延伸』、『農業振興・地方創生』、『持続可能な地球環境』であると考えており、当社の強みである『野菜』に関連する事業を通じて力になりたいと考えております。この3つの社会課題の解決に繋がる活動や、品質・環境・人材への取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えております」(カゴメ・担当者)
こういった思いを背景に実施しているサステナブルな取り組みは多岐にわたり、その全体像をここで網羅することはできないが、一部代表的な例を紹介したい。
サステナブルな農業の取り組みと、2030年までに達成を目指す容器原料の見直し
2019年に長野県富士見町に開園したカゴメの情報発信拠点「カゴメ野菜生活ファーム富士見」は野菜飲料を製造する富士見工場、生鮮トマトを栽培する農業法人八ヶ岳みらい菜園と連携してサステナブルな取り組みを進めているという。
例えば、『八ヶ岳みらい菜園』のトマト菜園施設では、野菜飲料工場から排出されるCO2や温水をトマトの生育に活用している。また畑では、生物多様性に配慮するなど、環境に優しいサステナブルな農業にチャレンジ。これらの取り組みを生活者に伝えることによって、結果的に環境への意識向上にも結びついているように思う。
また、カゴメの商品のうち、紙容器飲料に添付しているプラスチックストローについて、2030年までに石油から新たに作られるプラスチックの使用量ゼロを目指している。さらに、飲料ペットボトルについても、2030年までにリサイクル素材または植物由来素材を50%以上使用することを目標としているという。
子供たちへの食育にも熱心。「不思議の畑プロジェクト」の中身とは?
また、カゴメは「植育から始める食育」を広める活動に熱心に取り組んでいる。野菜を栽培する、収穫する、収穫した野菜を調理するといった一連の体験は、自然や食への知的好奇心や感謝の気持ちを育み、そして生きる力を養う「食育」につながるからだという。こういった思いからカゴメでは、野菜と裏酢楽しさを伝えていく新たな取り組みとして、「不思議の畑プロジェクト」を2022年よりスタート。さまざまなコンテンツがあるが、主だったところでは以下の内容だ。
■「不思議の畑のアリス」
「不思議の畑のアリス」は、世界中で愛され続けているルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の物語をモチーフに、制作したカゴメのオリジナルストーリー。野菜を育む畑の生きものや自然環境の不思議を主人公アリスと同じ目線で、楽しく冒険しながら学び、自然の恵みをいただくことへの感謝の気持ちが芽生える物語になっている。また、この物語に出てくるキャラクターがカゴメの様々な施策に横断的に登場し、畑の世界に親しみを感じながら、好奇心や探求心を持って楽しく知ってもらう取り組みだ。
■食育体験イベント「不思議の畑とトマトの樹」
全国6カ所のイオンモールに高さ2.3メートルを超える巨大なトマトの樹を設け、その周りに『不思議の国のアリス』をモチーフに製作したオリジナルストーリー『不思議の畑のアリス』の展示を行う。展示内容は、絵本パネル、キャラクター達が登場するオリジナルムービー、クイズラリーなど。会場内を巡りながら、畑の暮らしのつながりや、野菜にまつわる知識を楽しく学ぶことができる。
なお、2022年8月までは「不思議の畑プロジェクト」の一環で、上記以外の食育体験イベントも実施予定とのこと。こちらも多くの人・子供たちが参加することで、カゴメの願いがより強く伝わることと思われる。
■「りりこわくわくプログラム」
「りりこわくわくプログラム」では、カゴメトマトジュースに使用している特別なトマトの苗を、全国の小学校や保育園に無償で寄贈。栽培、収穫、調理までの一連の体験を通じて、達成感と喜びを提供している。これまで食育支援活動で提供した苗の本数は420万以上となっている。
■「おいしい!野菜チャレンジ」
NPO法人「放課後NPOアフタースクール」と連携した体験型授業。「野菜のことが好きになり、もっと食べてみたくなる」ことを目指すもので、子供たちが楽しみながら野菜について学び体験する取り組み。野菜に関するクイズや楽しい実験を通じて、野菜をとることの大切さを楽しく学ぶことができる。
農業と食の未来を見つめながら、野菜と果物のものづくりを通して人々の健康、豊かな食生活に寄与したい
もう一つ、野菜と生活者の接点を増やす試みを紹介したい。「野菜をとろうキャンペーン」というものだ。
野菜摂取の促進を目的として、野菜を摂ることの大切さや上手に、おいしく、楽しく摂る方法を広める取り組み。これは、活動の主旨に賛同した異業種の19の企業・団体と連携して進めている。
例えば賛同企業の日本電気株式会社(NEC)とは、同社の強みであるAIの技術を活用して、子どもが苦手な野菜と相性の良い食材の組み合わせを導き出し、これを利用したプリンを開発した。また星野リゾートが運営する「リゾナーレ那須」とは、「野菜の日」である8月31日から1泊2日のプランで、野菜を魅力を堪能できる祭典「ベジフェス」を開催する。
カゴメのサステナブルな取り組みのうち、特に生活者に寄り添ったものをここまでに紹介したが、冒頭の担当者のコメントにもある通り、その思いは深く、そして「野菜」を扱うメーカーならではの環境への優しい目線があるようだ。最後に改めて担当者に聞いた。
「自然の恵みを活かした事業を展開する当社にとって、持続可能な地球環境は重要な経営基盤です。豊かな自然のなかで農業が持続的に営まれるよう、CO2排出量の削減、石油由来プラスチック使用量の削減、生物多様性に配慮した農業等、環境に優しい活動を進めてまいります。未来を担う子供たちの健やかな成長を願う、一連の食育の取り組みは自然や食への知的好奇心や感謝の気持ちを育み、そして生きる力を養うことにつながるとも考えております。
当社はこれから先も、そして、創業以来大切にしてきた自然の恵みである野菜と果物を活かしたものづくりを通じ、人々の健康や豊かな食生活に貢献してまいります」(カゴメ・担当者)
カゴメによるサステナブルな事例は、多くの野菜や果物のように、有機的で優しい印象を受けた。特にお子さんがいる方は、カゴメの食育関連のイベントにぜひ参加してみてはどうだろうか。こういったイベントに参加することもまた、そのままSDGsにつながるはずだ。
文:松田義人(deco)