ビールの副産物で作る「アップサイクルジーンズ」というものがあるのはご存知だろうか。サッポロビールが発売した「黒ラベル Malt & Hops Series Yellow Stitch JEANS」というもので、ビール作りの数々のフローで出る副産物を多く使い、パウダー化。和紙系に加工した後、布にし、ジーンズ化するという非常に手間がかかるもので、ジーンズの上代4万1800円と高額ながら応募が殺到するという注目ぶり。
ビール製造の副産物を再利用することから、サステナビリティについて考えるきっかけにもつながっていると言う。この取り組みについて、サッポロビール・マーケティング本部・サッポロ生ビール黒ラベルのブランドマネージャーである齋藤愛子さんに聞いた。
各地の協力会社の繊細な技術を駆使し、手間と時間をかけて完成した
まず、この「ビールの副産物」にはどういった原材料が含まれるのだろうか。
「副産物の主な原料は、ビールづくりの工程で麦汁を搾ったあとに派生する『モルトフィード(麦芽の殻皮)』や、ホップの収穫時に出る『茎や葉』などです。これらは現在、主に動物の飼料や畑の肥料として再利用しているものです」(齋藤さん)
また、製造工程はかなり複雑なもの。以下の7つのフローになる。
1.パウダー加工
モルトフィードとホップの茎や葉を乾燥させ、パウダー状に砕き、和紙の原料となるパウダーへ。沖縄・糸満市にあるオキナワパウダーフーズの加工技術のノウハウによって実現。
2.和紙加工
パウダーとマニラ麻を混ぜ合わせて和紙にする。岐阜・美濃市にある大福製紙の伝統技術によって実現。
3. 撚糸(ねんし)
和紙からより紙の糸を作る。錦糸に比べ重さは約半分で、表面に毛羽が立たない滑らかさが特徴で、天然繊維であることから環境保全も考慮したエコ素材でもある。広島・福山市にある備後撚糸によって実現。
6. 織布(しょくふ)
和紙糸を横糸にして、縦糸(インディゴ染料で染めた糸)と織りこんでデニム生地を作る。ビール原料をデニム素材にアップサイクルさせ、デニム製品に至った後の経年変化の味までも楽しめることを目指す。広島県・福山市にある篠原テキスタイルによって実現。
7. 縫製
こだわりの工程から生み出されたデニム生地を使いレザーパッチ、ステッチ、リベット、ピスネームなど、さらに細部までこだわったジーンズを作る。広島・福山市にあるNSGによって実現。
ビールを通して「サステナビリティへの関心」と「自己表現の幅」を広げたい
ここまでに紹介した通り、沖縄→岐阜→広島と行き来し、各地の業者のかなり繊細な技術を駆使してできあがるビールの原料を使ったアップサイクルジーンズ。これだけの工程を見れば、「上代4万1800円」という価格にも納得できる一方、相応のリスクや不安もあったのではないだろうか。斎藤さんに聞いた。
「ビールの副産物からジーンズを作ること自体前例がありませんでした。この点は確かに不安がありましたが、当初より『ビール製造で出てくる副産物を、もっといろいろと活用させ価値を高めることはできないか?』『ビール好きな方が、もっと身近に考えられるものに使えないか?』という思いがあり、何度も策を練り実施しました。
また、『黒ラベル』ブランドは、『ビールで自己表現ができる世の中』『ビールがその人のパーソナリティの一部になる世の中』を目指しており、『自己表現』『パーソナリティ』といった面で親和性があるファッションと繋ぎ合わせるのが良いと鑑み、アップサイクルジーンズの製作を行うことにしました。『ビールの副産物から、ジーンズができる』ということを感じていただき、同時にサステナビリティについて考えるきっかけになっていただければうれしいです」」(齋藤さん)
今後もブランドコンテンツを活用し、さまざまなアクション実施を目指す
つまり、「サステナビリティを考えるきっかけ作り」と「『黒ラベル』のブランディング視点」の両輪での取り組みということになるが、今後もこういった取り組みは会員サイト「CLUB黒ラベル」などを通して、実施していきたいとも。
「『CLUB黒ラベル』は、黒ラベルの世界をより深く味わっていただける会員制サイトです。さらに、このサイト内にあるオンラインショップ『黒ラベル THE SHOP』では、アップサイクルジーンズだけでなく、さまざまな商品を販売しています。こういったコンテンツをうまく活用しながら、今後もさまざまなアクションを行っていきたいと思っています。今後の展開にもぜひご期待いただければ幸いです」(齋藤さん)
※アップサイクルジーンズは100%ビールの副産物からできたジーンズではありません。
※アップサイクルジーンズは「黒ラベル」の副産物だけを使用しているわけではありません。
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文:松田義人(deco)