2015年頃から活動を続け、2019年に創部された名古屋国際中学校・高等学校の「SDGs未来倶楽部Sus-Teen!」。企業や各団体と連携し、学生ならではのアイデアを出しながらさまざまなSDGs活動を行っている。顧問の黒宮祥男先生、部長の水谷瞳菜さんと部員の伊藤志穏さんに、活動の話を伺った。
SDGs未来倶楽部Sus-Teen!が立ち上がったきっかけは、社会科を担当する黒宮先生の授業だ。「当時、まだ教科書に載っていなかったSDGsについて話をしたところ、興味を持った生徒が集まってSDGs活動をすることになりました」と黒宮先生。「最初は学校で廃棄されるものを活用して何か作ろうという話になり、テニスボールを活用した植木鉢を作りました」。それを発端に、大型ショッピングセンターのイベントへの出展や企業との連携も開始した。
「イベントでは、私たちの活動を発表するとともに、間伐材のバッジやロゴ入りのラムネなどを取り入れた“Sus-ガチャ”の体験コーナーも作りました」と水谷さんは話す。そのSus-ガチャのカプセルの中身のひとつに、鹿児島・桜島の火山灰も使用している。「私たちの活動を発信するSNSを見て、鹿児島の高校から『自分たちも部活を立ち上げたいけれどどうしたらいいか』と相談があり、ズームで一度打ち合わせをしました。その時、鹿児島のPRのために、カプセルに火山灰を取り入れようということになったのです」と話す水谷さん。
企業が主催するイベントに出展したところ、「何これ?すごいね!」とガチャの体験者からも反響を呼んだという。「地元の人にとっては興味を引かない火山灰も、こちらでは具体的に知らない人が多い。鹿児島に興味を持ってもらえるいいPRの機会になりました」。
日本特殊陶業のSDGsワークショップでは、偶然居合わせた東海テレビ放送の方から「番組の背景に使う花を、もったいないからなんとかしたい」という相談を受けてさっそくみんなでアイデアを出し合ったという。「日本特殊陶業の製品に、スパークプラグというものがあり、それとドライフラワーにした花を組み合わせて“プラワー”を作りました」と水谷さん。“プラワー”はSDGs AICHI EXPOに出展、訪れた人たちからも注目を集めた。「私たちが考えるSDGsのひとつに『アップサイクル』があります。身近にあるものを組み合わせるだけで、この“プラワ−”のようにちょっと幸せな気持ちになれる。SDGsという言葉は浸透していますが、実際にやっている人は少ないので、まずはこういう身近なことから参加できることを伝えていきたいと思います」。
こうしたSDGs活動はモノづくりにとどまらず、地域貢献活動にも及んでいる。名古屋市の八事や岐阜県の御嵩町では、森林の間伐に参加して里山保全に協力。その他ボランティア活動にも取り組んでいる。
現在は、部内で3つのグループに分かれてそれぞれに活動計画を立てている。1つは企業とコラボで行うもの、もう1つはSDGs AICHI EXPOで知り合った小牧の企業と連携し、光沢のある廃材を利用して作るアクセサリーやメイク用品のケースづくり、3つ目は名古屋市の企業と共同で、オーダーメイドで余った布を再利用して楽器のカバーやランチョンマット、巾着袋、カトラリーケースを作る取り組みの企画だ。カトラリーケースは、小さい子供がいる家族が対象。「ケースに子供専用のスプーンや食器などが入るポケットをつけて、使いやすいものにしたい」と水谷さんと伊藤さんは声を揃える。企業との数々のコラボを経て、自分たちが伝えたいという思いだけではなく商品としてきちんと売れることも考えなくてはいけないという学びも得た。「企画にはターゲットや地域、目的を考えることは大切だと思っています」と2人は話す。
またグループでアイデアを出し合うとともに、個々でも企画を考えることもある。水谷さんは、障害を持った人や子供、お年寄りなど世代を超えてだれもが楽しめる「ノーマライゼーションスポーツ」について、地元大学生と共同で研究し、特別なルールを設けた「セカンドキャッチバレー」や「ドラクエドッジボール」などを編み出した。「同じスポーツを通して、誰もが輝けたら素敵だと思います」と水谷さん。未来と可能性を創るSDGs未来倶楽部Sus-Teen!の活動は今後も続いていく。