DX化を推進し若手社員が働きやすい職場づくりに尽力 年間約1000社を超える会社が見学に訪れる「テルミック」の人に優しい取り組み

2023年3月17日

創業34年目を迎える、金属部品業の「株式会社テルミック」。金属加工というと男性が多い会社のイメージだが、こちらでは全社員の7割弱が女性で、それぞれに活躍している。SDGsの17のゴールの8番「働きがいも経済成長も」にもあたる、働きやすい職場づくりの創出について、代表取締役の田中秀範さんに話を伺った。

愛知県常滑市にある、株式会社テルミックりんくう常滑営業所


田中さんは1990年、22歳のときに株式会社テルミックを創業。最初は一人で旋盤一つで部品加工を行い、その後従業員が約30人となり、昔ながらの部品加工を行っていたという。「製造業は男社会。ベテラン職人の厳しい仕事に、若い社員も女性もまわりに仲間がいなくなると辞めてしまいます。なんとか若い力をつなぎとめることはできないかと悩みました」。愛知県では人を1人採用するのに約100万円かかると言われる。「大手企業に若者を持っていかれないようにするためには、話題となるような取り組みをしなくてはならない。若い人たちが働きたくなるような会社にするために、本気で考えました」。さっそく田中さんは働きやすい職場環境、仕組みづくり、DX化に取り組んだ。

【写真】DX改革に本気で取り組む社長の田中秀範さん


「これまでの営業はFAXを送り、電話をし、訪問をするというのが主流でしたが、それをやめてメールやチャット、FAXを使って“外回りをしない内勤営業”スタイルに切り替えました」と田中さん。内勤営業にすれば、技術でわからないことがあっても社内ですぐに確認が取れるため顧客へのレスポンスが早くなり、見積もりもスピーディーに出せる。また過去の仕事をすべてデータ化。

「営業担当は、技術的に難しいことを覚えなくても『旋盤ならA社』『研磨ならB鉄工所』と覚えればいいわけです。その結果、金属加工を知らない女性でも営業ができるようになって女性社員が増えました。今、当社は25〜27歳の層が厚く、まさにネットやSNS世代。お客様も若い担当者が多く、やり取りもスムーズで仕事の受注率が格段に上がりました」。

社内に設置された売上カウンター。売上が即時に提示され、金額に応じて花火や金塊などのアニメが現れるカウンターは見ているだけで楽しく、やる気になる

書類などはロボットが運び、仕事の効率を上げる

田中さんの席の周辺も、まるでオフィスとは思えない賑やかな雰囲気


さらに営業戦略チームも立ち上げ、WEBマーケティングにも力を入れているという。「ホームページのアクセス数が多くても受注につながらないことを徹底的に分析。ページ上のどこにお客様が興味を持って見ているのかをヒートマップで解析し、そこにリンク先を貼って注文や見積もりができるように設計し直しました。もちろんWEB広告もきっちりと行いました。そのおかげで、新規のお客様がどんどん増えてきたのです」と話す田中さん。

営業戦略チームのフロア。新規の顧客はここで対応



広報活動にも力を入れ、兼務で広報業務を行い、ホームページに動画や自社スタジオで制作するラジオ番組もアップしている。「私も趣味のDIY動画をアップしていますが、動画を見た人が自分のコミュニティで話をしてくれると、また別の人が動画を見てくれる。ラジオ番組の内容は、これまで当社を訪問された会社のトップにモノづくりに関するお話を伺う内容が中心で、オンタイムで約1500人が聞いています。これによってホームページへのアクセス数が増えるので、どちらも真剣に取り組んでいます」と田中さん。これらの広報活動やDX化が相乗効果を表し、売上は右肩上がりだ。

刈谷本社にあるテルミックスタジオ


こうした取り組みが功を奏し、若い世代や女子社員が増加。特に女子社員は全社員の7割弱を占めるという、製造業ではあまりない傾向が見られる。テルミックでは社員の働きやすさを重視し、福利厚生にも注力。独自の取り組みとして定時に退勤し、社内で食事会をすると1人1500円の補助がつくという『Eat In Telmic(イートインテルミック)』制度も設けた。「社員はみんな家族。外食すればコロナや帰宅までの安全などいろいろ心配ですが、社内での食事会なら安心ですし、社員同士のコミュニケーションも深まります」。育児休暇中の社員も参加できるため、社員からも好評だそうだ。

『Eat In Telmic(イートインテルミック)』を利用した食事会の風景。社員同士の絆もより深まる


田中さんが自らDIYしたというミーティングスペース。食事会やセミナーなどに使用


製造部門もDX化を推進。工場内は明るく清潔感があり、製造業のイメージとはかけ離れた空間だ。「ハイヒールでも歩ける工場をめざしています」と田中さん。作業も効率化し、ロボットが書類や部品を持って動き回る。「作った部品を3Dスキャナー型3次元測定機でスキャンしてクラウドに上げることで、検査員が在宅でも検査ができるようにしています。また全国から入ってくる部品をここで仕分けして、2次加工や3次加工をしてくれる協力会社へ手配します。少ない人数で仕事を行い、社員みんなの給料をアップさせる。めざすのは“鉄工界のAmazon”です」と笑顔で話す。

「今年の目標は“紙ゼロ、ルーティンゼロ、残業ゼロ”。若い人たちにヒントを得ながら、タブレット化も進め、常にワクワクする会社をめざしていきます」。まだまだ進化中のテルミックの今後に期待したい。

検査も少ない人数で高効率を上げる

株式会社テルミックが手がける加工部品の数々を工場内に展示

工場内とは思えない、おしゃれな休憩スペース

オリジナルグッズを作成し、訪問者に配ってPRを図る

県などから表彰を受けるその取り組みに興味を示し、見学する会社は年間約1000社を超える