2023年3月12日、福島県双葉郡のナショナルトレーニングセンター Jヴィレッジにて、福島の未来と環境再生について考えるシンポジウム『福島、その先の環境へ。』が開催。2022年8月に実施した関連企画の参加者である小島よしおや、LOVE FORNIPPON代表理事のCANDLE JUNEらが登壇し、パネルディスカッションなどを繰り広げた。
環境省では、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故の発生以降、除染をはじめ、被災地の環境再生に取り組み続けてきた。それらに加え、脱炭素などの環境施策を通じて、“福島復興”のための新たなステージにも取り組むべく、福島県との連携協力協定を踏まえ、「福島再生・未来志向プロジェクト」を推進している。
このプロジェクトの一環として、福島の復興・再生の取り組みを振り返るとともに、県内外の識者と“福島の未来”について共に考えるべく実施されたのが、このたびの『福島、その先の環境へ。』シンポジウムだ。
環境省環境副大臣・小林茂樹氏による開催挨拶、環境省参事官・馬場康弘氏による環境省プレゼンテーションの後、まずは2022年8月に実施された「『福島、その先の環境へ。』次世代ツアー」参加者による活動報告が行われた。
続いて、福島県に縁や関心のある若者たちから環境施策に関するさまざまなアイデアを募集し、これを表彰する「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード2022」受賞者による発表を実施。代表として参加した高校生、中学生たちが、これまでの取り組みについての説明を行った。
そしてシンポジウムの後半では、村尾信尚氏(関西学院大学教授、元ニュースキャスター)がファシリテーターを務める形でトークセッションを実施。小林副大臣、馬場参事官をはじめ、「次世代ツアー」に参加した小島よしお、「チャレンジ・アワード」の審査員でもあるCANDLE JUNE、2022年10月に香川県で行われた「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム」に参加した中野美奈子(フリーアナウンサー)といった面々が登壇し、ディスカッションを繰り広げた。
福島県の復興・支援に長らく携わってきたCANDLE JUNEは、12年の歩みを振り返りつつ、以下のように話した。「震災以来、福島県には通い続けていますが、これまで県内の方たちは当時のことについてあまり語りたがらなかったところがあります。それがこの数年で変わってきて、『当時のことを発表する活動に参加したい』という方が少しずつ増えてきているんです。それに伴い、県外でもこれまでは“福島県=震災”というところで情報がストップしていた方たちの間で、積極的に福島県について知ろうという流れができ始めていて。今こそ、福島県の現状と魅力を広く知ってもらえるチャンスだと思うので、そのための活動をこれからも応援していきたいと考えています」
続いて、「『福島、その先の環境へ。』次世代ツアー」に参加した際の感想を聞かれた小島は、そこで出会った人々との交流を振り返りつつ、「除去土壌の再生利用に尽力されている方たちから、お話をうかがいました。自分たちの生活も苦しいなか、長い時間をかけて活動を続けてこられて…。その甲斐あってようやくいいデータが得られるようになった、ということも教えていただきました。どんなに大変なことが起きても、そこには人が暮らしていて、環境を良くするために努力し続けている人がいることを忘れてはいけない。そういったことを改めて実感できたツアーでした」と話した。
このように福島の復興・再生のため、さまざまな努力がなされるなか、解決しなければならない問題もまた多くあるという。小林副大臣によると「除去土壌を管理・保管するための中間貯蔵施設を確保するには、運ぶ先の方々にも安心して受け入れてもらえるように、徹底して安全に配慮した環境を整えなければなりません。これまでは福島県内だけで取り組んできましたが、今後は全国の皆様にも協力していただけるように、最善を尽くしてプロジェクトを推進していきます」とのこと。
こうした現状について、中野は対話フォーラムに登壇した際の経験を交えつつ、以下のように話した。「多くの方にとって、除去土壌は“得体が知れないもの”であって、そんなよく分からないものが自分たちの暮らしている地域にやって来るということは、やはり怖いと思います。だからこそ、しっかりと目に見える形で『これは安全なものです』と説明できる事例を提示することが大切ですね。皆が安心して『受け入れよう』『応援しよう』という気持ちになれるように、そのための体制づくりが今後はますます重要になってくると思います」
最後に、小島は「こうした情報は二極化するんですよ。知っている人はものすごく詳しいところまで知っているし、知らない人は何年経ってもまったく知らないままでいる。なので、知っている人がそれぞれの得意とする分野で情報を発信して、知らない人にも興味を持ってもらえるようにしていく…というのが、正しい理解を促進するうえで効果的な方法だと思うんです。僕の場合は歌ったり踊ったりするのが好きなので、そうした要素を取り入れながら発信していますが、文章を書くのが好きな人なら、小説を書くことで情報を発信するという方法もアリですね。蓄えた知識を、自分なりの方法で発信し続けることが大事だと思います」と話し、トークセッションを締めくくった。
取材・文=ソムタム田井