ペーパーレスが進む社会で紙業界がチャレンジしていることとは?市場動向を捉え「紙とデジタルの融合化」を目指す

2024年4月9日

紙を中心とした専門商社である株式会社KAMIOL(カミ―ル)が、SDGsを実現するために、環境配慮型商品の販売・開発を強化している。その取り組みの第一歩として2024年2月に、自社で運営するECサイトKAMIOLSHOP(カミールショップ)にて新製品「エシカルペーパーセット」を発売。

ペーパーレス化が進む現代で、紙製品の生き残りをかけてSDGsを意識した商品展開を強化する想いについて、担当者に話を聞いてみた。

“変えるだけ”でSDGsへ貢献!紙の総合商社が提案する「エシカルペーパーセット」とは?


「エシカル」とは?

そもそも、「エシカル」とはどういった意味なのだろうか。英語の「ethical」が語源で、「道徳的な」「倫理的な」という意味を持つそうで、エシカルペーパーは環境への配慮や社会課題への貢献など、倫理的に責任を持って生産された紙のことを指す。企業がエシカル紙を使用することは、環境配慮や社会課題の解決に向けた姿勢を示し、SDGsへの取り組みをアピールすることにつながるのだという。

今回発売された「エシカルペーパーセット」は、森林循環紙などの持続可能な資源から製造されたエコな紙や、再生紙・間伐材使用紙などを同社がセレクトし、セットにしたもの。印刷用紙を中心に20種類の紙を収録しており、厚さも幅広いので、質感などを確かめながら、より希望に近い紙を探すことができる。環境保全への貢献を意識した企業はもちろん、個人でも購入できる商品となっている。

KAMIOLSHOPにはSDGs特集のアクセスや問い合わせが増えているそうで、「エシカルペーパーセット」はそのニーズに応えた商品となっている。用紙は小ロットから業務単位などさまざまな単位での販売が可能で、製品の手触りや色、印刷具合に関する情報が得られることで、より簡単に環境に配慮した選択を行うことができる。

どんな紙が環境にやさしいの?

株式会社KAMIOLによると、SDGsへの興味とともに「どんな紙が環境にやさしいの?」という問い合わせを受けることも多いという。ここでは、環境にやさしい紙の一例を紹介する。

【森林認証紙】
FSC森林認証紙やPEFC森林認証紙など、適切に管理されていると認証された森林資源を活用した紙。このFSCマークの入った製品を購入することで、適切な森林管理を行っている林業者を支援し、世界の森林保全を応援できるだけではなく、「地球環境を考えた木材製品を選びます!」という意思表示にもなる。

【古紙配合紙】
各家庭や企業などから回収された古紙を原料料の一部にした紙。日常生活で最も身近でなじみのある、いわゆるリサイクルペーパーだが、配合率やその後の製紙方法などの違いによってたくさんの商品が存在している。

【非木材パルプ配合紙】
通常、紙の主原料は木材から作られた木材パルプだが、これを非木材(=木材以外のもの)に置き換えたパルプを素材とした紙。代用の素材は、竹やコットン、バガス(さとうきびの搾りかす)などさまざま。

【間伐材配合紙】
名前のとおり、健全な森林の育成に必要な伐採の際に生じる間伐材を使用。木材らしさを活かした色合い、風合いなど工夫を感じられる商品がそろう。

新製品や今後の戦略について担当者に話を聞いた

紙の総合商社だという会社のことや、「エシカルペーパーセット」開発への想いなどを、株式会社KAMIOL Eコマースチームの松田さんに話を聞いてみた。

――まずはKAMIOLさんについてお聞かせください。1924年(大正13年)創業とのことですが、創業当時から紙を取り扱っていたのでしょうか?

【松田】創業当時は紙工品と言われる障子紙やのし紙の卸売り、小売やパンの袋などの製袋を商いにしていたようです。現在は主に印刷用紙や家庭紙を扱い、印刷会社やパッケージ会社へ紙を販売しています。

――紙の総合商社とのことですが、どのような商品を取り扱ってますか?

【松田】主に印刷用紙を取り扱っております。印刷用紙といってもいろいろな種類や厚さがあります。印刷会社へ販売しているのは上質紙や、チラシやカタログなどに使われるインクの発色をよくするためのコート紙、紙に模様や凹凸など、何かしら特徴・機能のある特殊紙と呼ばれる紙が多いです。主力品だけでもサイズ・厚さがさまざまあり、それらを広い倉庫で管理しています。

たくさんの種類の紙を保管している倉庫

【写真】土に還る紙製の器「WASARA」も取り扱っている

梱包時の隙間を埋めるのに大活躍!アイデア次第でさまざまな用途がある「無地新聞紙」も好評


――「エシカルペーパーセット」は、企業だけでなく個人消費者向けとのことですが、どのような想いを込めた商品でしょうか?

【松田】メーカーは自分たちで管理(植林や伐採)している森林からとったパルプ(森林認証紙)であったり、生い茂った森林は光が中まで届かなく、木の成長を妨げるため木を間引くのですが、その間引いた木を使ったパルプ(間伐材)、木ではなく成長の早い植物を利用した紙(非木材紙)など、環境にやさしい持続可能なことをしているのに、実際はエンドユーザーには伝わっていないことのほうが多いです。SDGsや環境負荷に関して興味はあるのに、何を選べばいいのかわからない状態だと思うので、メーカーとエンドユーザーを繋ぐ弊社の役割として、環境にやさしい紙がほしいときに参考になればいいなといった思いがあります。

2月6日に発売された「エシカルペーパーセット」(1000円)

持続可能な資源から製造されたエコな紙や、再生紙・間伐材使用紙などをセレクトした「エシカルペーパーセット」


――「エシカルペーパーセット」を購入後、企業や個人にどのような行動に移してもらうことを想定されていますか?

【松田】サンプルセットの中に収録されている紙に関しては、弊社のネットショップから購入ができます。銘柄にもよりますが、A4サイズで10枚くらいから購入可能です。印刷は印刷会社にお願いするだけでなく、社内の印刷物であったり、学校などの文集、PTAや地域の催事の際に使うプログラム、同人誌の作成など、ご自身で印刷される場合も多いかと思います。そんなときに「エシカルペーパーセット」を見て、どんな用紙がいいのかを参考にして紙を購入していただく…といった流れを想定しています。

――ペーパーレス化が進む社会ですが、そんな社会でも必要とされる紙製品は確かにあると思います。紙の総合商社としての今後の戦略を教えてください。

【松田】デジタル媒体が増加し、ECサイトでの商品購入などデジタル化が進展するなかでは、印刷用紙に関してはペーパーレスがますます進んでいくと思います。ですが、一方で食品や消費財の梱包、包装材の需要は高まっています。

【松田】特に持続可能な素材の需要は増加していて、紙業界でもバイオマスの梱包材料やリサイクル可能な包装材料が増え、環境にいいものとして見直されていたりします。近年では日本の“技術”や紙の“よさ”、“温かさ”に海外からの需要も高まっています。そんな市場動向を受けて「紙とデジタルの融合化」にベクトルを合わせ、国内だけではなく海外も視野に入れた動きをしていかなければいけないと思います。

ペーパーレスの時代のなかで高まっているという、SDGsに貢献できる素材や製品のニーズ。一見、危機と思える状況でも冷静に時代を捉え、進んでいくKAMIOLの今後に注目したい。

取材・文=矢野 凪紗

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