日本の手仕事を未来へ残すために、後継者育成に力を注ぐ動画メディア「ニッポン手仕事図鑑」

2024年5月21日

「日本の手仕事を残していきたい」と、日本各地の職人たちの仕事を紹介する動画メディア「ニッポン手仕事図鑑」。編集長の大牧圭吾さんに、立ち上げのきっかけや込められた思い、現在の活動や今後について話を聞いた。

全国各地の職人仕事を動画で紹介



大牧さんが「ニッポン手仕事図鑑」を作ったきっかけは、地方創生への思いからだという。「大人になるにつれて日本の各地域の個性や風土が薄れていく感じがして、なぜ薄れていくのかを真剣に考えました」と大牧さん。「地域の個性や文化を作るものはなんだろう?と考え抜いた先に出合った答えは、“人”でした。そこから、自分ができる地方創生として“人”にフォーカスし、地域の産業を盛り上げることに対してやれることからやっていこうと考えたのです」と2015年に立ち上げた。

「ニッポン手仕事図鑑」では、伝統工芸や手仕事に携わる多くの職人を動画で紹介している。大牧さんとフォトグラファーは100本以上の動画を作成。多くの職人たちとの出会い、さまざまな話をする中で後継者について話すこともあった。その一例として長野の木曽漆器を手がける女性職人は「作り手になってくれる人も後継者だが、漆器を買う人や漆器を後世に伝えてくれる人も後継者」と話したという。「この言葉を聞いて自分も伝統工芸の後継者の1人なんだという意識を持つようになりました」と大牧さんは話す。

細かい手仕事もこだわって撮影し、その魅力を伝える


今までに100本以上の動画を作成



大牧さんは「各産地の課題は大きく分けて3つある」と話す。「1つは販路開拓、2つ目は職人技を使った新たな商品開発、3つ目は後継者問題です。このうち1と2は民間でサポートする企業や団体もいますが、後継者問題について全国的に取り組む団体はさほど多くがないのが現状です。誰かが動かないと問題は解決しない、ならば自分がやろうと思いました」。

2018年から2年間、自費で「後継者インターンシップ」を行い、1人誕生したことで手応えを感じ、2021年から本格的にインターンシップを開催し始めた。これまでに1700人以上の応募があり、50人近くの人々が職人になろうと決意。「後継者インターンシップの告知はものづくり系の大学や専門学校でのポスター掲示やSNSで行いますが、公式のメッセンジャーアプリのアカウント登録者数は現在5400人を超えています」と大牧さんは話す。

学校などにポスターを掲示し、募集する



「後継者インターンシップ」は面談や選考を行ったあと、1泊2日〜2泊3日の日程でインターンに参加。仕事や体験を通して職人と密にコミュニケーションを取り、そこから内定が決まる。「若い人はなかなか作品を作らせてもらえないというイメージがありますが、昨年、福岡の小石原焼の職人のもとで働く若い男性がろくろを担当した作品は、師匠に認められ、『若手職人の作品』として販売され始めたそうです。職人の皆さんも、若い人たちにやりがいや楽しさを感じてもらわないと続けてもらえないと考えています」。

福岡の小石原焼の若き職人

どの分野のインターンシップでも、きめ細やかな指導が行われる

女性の応募者が多いという


後継者インターンシップで採用したことで生産性が下がることがないと話す職人も多いという。「たとえば百貨店出展で不在にするときも、店や工房に残って接客をしてくれたり、SNSなどで積極的に魅力を発信してくれるお弟子さんもいたり、即戦力になる人もいます」と大牧さん。「これまで職人さんは作品に対してあまり値上げをすることがありませんでしたが、お弟子さんがきちんと食べていける仕事にするために、値上げに対して前向きになっているのも売り上げ低迷などの問題解決にとって、いい糸口になると思っています」。

採用された人たちは、自分の生業として熱心に仕事に取り組む


若い人たちが伝統工芸を継ぐことによって地域が活性化されていく


「伝統工芸はその土地でしかできないもの。若い人たちが後を継ぐことによって移住者が増え、地域が活性化されていきます。伝統工芸を後世に残すことが地域創生につながると考えています」と話す大牧さん。今後は年間100人の後継者を生み出すことと、商品販売以外での職人の新たな収益源を作ることを目標にするという。10年後も100年後も日本の手仕事が継承されていくことは、持続可能な社会へとつながっていく。

【写真】編集長の大牧圭吾さん

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