夏休みの自由研究にも最適な「エコ・アクアリウム」で海のごみ問題やSDGsについて考える

2024年7月26日

「海洋プラスチックごみ」という言葉、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。海で生活する生き物たちの中には、こうした海洋プラスチックごみなどによる海洋汚染によって、生活環境を脅かされているものも少なくない。

今回は、おもに海洋プラスチックごみと生き物の関係について展示・解説している「名古屋港水族館」(愛知県名古屋市)の常設展示「エコ・アクアリウム」を取材。担当者に話を聞いた。

名古屋港水族館の常設展示「エコ・アクアリウム」photo by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


水族館だからこそ、海洋環境問題を紹介する

話を聞いたのは、名古屋港水族館の市川隼平さん。なぜ、水族館の中にこうした展示スペースを設けているのだろうか。

「水族館は、環境教育の場でもあります。展示されている生き物を見るだけでなく、さらにはその生き物が棲む海などの環境にも興味を持っていただきたいという思いがあります。その海で起きている環境問題を知ってもらうために設置したのが、“エコ・アクアリウム”です」(市川さん、以下発言部分はすべて)

エコ・アクアリウムを担当する市川さんphoto by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


2019年、名古屋市が「SDGs未来都市」に認定。「エコ・アクアリウム」は翌2020年に開設された。現在は主に海洋プラスチックごみ問題について展示しており、プラスチックが海や生き物たちに与える影響などについて解説している。

パネルや大型モニターなどを用いて、海洋プラスチックごみ問題について解説photo by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


マイクロプラスチックの実物を展示

2017年に日本から海洋に流出したプラスチックごみは、2~6万トンと推定されている。こうしたプラスチックごみは自然では分解されにくく、海に到達すると、長期に渡って海の中に存在することとなる。

そして、長い時間をかけて砕けていき、5ミリ以下の大きさになったものを「マイクロプラスチック」と呼んでいる。マイクロプラスチックは小魚などの生物がエサと間違えて食べてしまうことがあり、問題とされている。

マイクロプラスチックの実物を顕微鏡で観察できるphoto by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


エコ・アクアリウムでは、実際に砂浜で採取されたマイクロプラスチックを展示しており、顕微鏡や虫メガネを使って観察することができる。よく見ると、中にはもともとがどんなプラスチック製品だったのか、わかるものもある。

プラスチックがウミガメの生態に影響を与える

名古屋港水族館でも飼育されている、人気のウミガメ。そんなウミガメたちの命が、プラスチックによって脅かされていることをご存知だろうか?

名古屋港水族館とアメリカ大気海洋気象局が共同で行った調査により、北太平洋を回遊するアカウミガメの子どもが、どこで成長しているかということがわかってきた。一方で太平洋には、海流や風によって「太平洋ごみベルト」と呼ばれる“ごみが集まりやすい海域”があるという。そしてどうやら、アカウミガメの回遊経路と、この「太平洋ごみベルト」が重なっているようなのだ。

ウミガメは海中に漂っているプラスチックごみをエサと間違えて食べてしまうため、人間の出したごみがその命を危険にさらしている可能性がある。エコ・アクアリウムでは、漂着したウミガメの胃の中から見つかったレジ袋を展示している。実物を見て、これが胃の中に入っていたのかと思うと、なかなかにショッキングである。

1979年に兵庫県で見つかったウミガメの胃の中から採取されたレジ袋photo by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


「名古屋港水族館ではウミガメも飼育しています。かわいらしい姿を見て、ウミガメの生態に興味を持ってもらい、エコ・アクアリウムにも足を運んでもらえたらと思います」

プラスチックごみが影響を与えているのはウミガメだけではない。エコ・アクアリウムには、アメリカ・ミッドウェー島で死亡したコアホウドリの胃の中身を写真で展示しており、ここでもプラスチックごみが生き物の命を奪っていることがわかる。

死亡したコアホウドリの胃の中は、プラスチックごみでいっぱいだったphoto by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


環境を変えたのは誰?

“生命の源”とも言われる海。そんな海の環境を変えてしまったのは、ほかならぬ人間だ。

「道に落ちているペットボトルやタバコの吸い殻を見たことがあるでしょう。誰にも拾われなければ、これらは風や雨によって側溝などの低い場所へ運ばれて、やがて川に流れ出し、最後には海へ辿り着きます。そしてプラスチックごみはいつまでも海を漂い続けます。これらが自然環境にどのような変化を起こすのか、一度考えてみてください」

プラスチックごみを排出しているのは人間。では、私たちにできることは何だろうかphoto by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


もちろん、海のごみを少しでも減らそうと動いている人たちもいる。たとえば「名古屋清港会」は60年以上、名古屋港周辺の海や川でのごみ回収を行ってきた。しかしながら、世界中でリサイクルされなかったプラスチックごみは、2017年には128万トンも地球上で排出されている。清掃・回収だけでは追いつかないのが現状だ。

「ではまず私たちにできることは何か。それは、ごみの量を減らすことです。リデュース(量を減らす)・リユース(繰り返し使う)・リサイクル(資源として再利用する)を基本に、まずはごみを出さないこと。一人ひとりができることは、とっても身近なことなんですよね」

夏休みの自由研究の題材にもおすすめ

海洋汚染や海洋プラスチックごみと聞くと、なんだか壮大なイメージを持ってしまいがちだが、そもそもの原因は人間がプラスチックごみを排出し続けていること。問題となるごみは、私たちの生活をとおして出ているものだ。そのごみを減らしていけば、きっと海の環境も改善していくだろう。

「エコ・アクアリウム」は夏休みの自由研究の題材にもぴったりphoto by Kanji Furukawa / (C)KADOKAWA


子どもの夏休みの自由研究課題が決まっていないのなら、ぜひ名古屋港水族館の「エコ・アクアリウム」に足を運んでもらいたい。子どものころからごみについて考えるのは、とてもいいことだろう。

この“エコ・アクアリウム”を参考に、たとえば自分の家で毎日どのくらいのごみが出ているのかを調べてみたり、砂浜でプラスチックごみを採取してみたりするのもいいかもしれない。

海洋プラスチックごみは海の生き物だけではなく、人間も含めた、すべての命の問題だ。当事者意識を持って自分に何ができるのか考え、一人ひとりが実行していくことが大切だ。


取材・文=民田瑞歩/撮影=古川寛二

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