「誰もが気軽にものづくりを楽しめる場所」を運営し、ものづくりの楽しさや創造性を発信&社会に貢献

2024年10月26日

国内でも工芸品や工業製品など優れた技術を持つ産業が多いといわれる福井県。中には国内シェア、世界シェアの上位を誇る技術もあり、優れたものづくり技術は県の魅力にもつながっている。福井市でものづくり工房「トンカンテラス」を営む株式会社ソリッドラボの代表、黒田悠生さんもサステナブルなものづくりの楽しさを伝えるひとりだ。その活動内容について話を伺った。

多彩なものづくりの体験を行う「トンカンテラス」


大学を卒業後、福井県内のプラスチックメーカーに就職。東京の支店で4年前まで働いていたという黒田さん。「会社ではプラスチック製品を作る一方で、廃棄されるプラスチック製品をリサイクルして新たな価値を生み出す仕事にも携わっていて、サステナブルなものづくりに興味を持っていました」。仕事は順調だったが、父の介護をきっかけに福井へ戻ることに。「せっかく戻るなら、誰かのための1個だけのものづくりができる場所を作りたい」とトンカンテラスを立ち上げた。

祖父が使っていた仕事場を「トンカンテラス」として改装

あらゆるものづくりにチャレンジできる場所だ


「トンカンテラス」には、あらゆるものづくりに対応できるようさまざまな道具をそろえている。また老若男女、ものづくりがしたいと思ったら誰でも気軽に利用できるのも特徴だ。「レーザーカッターを使って家の表札を作ったり、手が不自由な方が自分でペットボトルを開けられるような自助具を作ったり、手芸教室の先生がパーツを作りに来ることもあります」という黒田さんは、作り方に困ったらサポートをしてくれるとも。「こんなものづくりをしたいけど、作り方がわからない、という人にも丁寧に教えます。ものづくりをしたことがない人にこそ、その楽しさを伝えたいですね」と笑顔で話す。

3Dプリンターを使ってさまざまなものづくりを行うことができる

老若男女、ものづくりがしたいと思ったら誰でも気軽に利用できる


黒田さんは海岸に漂着する海洋プラスチックごみや、地域・企業から廃棄されるプラスチックごみを素材化し、再生するために必要な粉砕機や成形機などのリサイクル機械を開発。「若狭湾のビーチクリーン団体と出会い、プラスチックごみのリサイクルを県内でできるようにしよう、と話したことがきっかけです」。また会社として企業や団体と連携し、商品開発から事業開発、リサイクル関連機器の開発や製造販売も行い、最低1個から商品化することにも対応している。これまでにキーホルダーやカラビナ、楽器、コースターなどさまざまな商品へのリサイクルを実現。「小ロットでサステナブルな素材を使った商品を作りたい、という企業や団体の声に応えられるのがうちの特徴です」と話す黒田さんを頼り、国内の名だたるメーカーからも問い合わせがあるという。

さまざまなプラスチックごみをリサイクル

ペットボトルのキャップを粉砕し、新たな製品の材料にする

ギターのピックや、コースターなど多彩な商品に生まれ変わる

カラビナなども自分たちの手で成形できるように開発


「トンカンテラス」は、ものづくりの場としてだけではなく、人が気軽に集まり交流できる場所にもしたいと黒田さんは話す。これまでに、地域のゴミ拾いのあとにここでコーヒーを飲みながらコミュニケーションを深めるイベントや、がん患者のためのサロンなど、多彩な催しも行っている。「誰もが気軽にフラッと立ち寄れる、日常の暮らしに溶け込むような場所にしていきたいですね」。これからもものづくりの手助けをしながら、ものづくりを軸に社会と実験し続ける会社として活動を広げていく。

「ものづくりは創造的で、ゴミも最小限。そんなものづくりの魅力を伝えたい」と黒田さん

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