今回のテーマは「背中」
ゆきよみさんに、物語のこだわりや苦労した点について聞いてみた。
「今回のお話は『背中』をテーマに作りました。お兄ちゃんの背中をクッションにして飛び降りるさくらから始まり、ストーブよりも暖かかったお兄ちゃんの背中や、その背中を追いかけるさくら。『背中』をキーワードにお話を繋げ、展開していくところにこだわりました」
なかでもお気に入りは、最後のコマだそう。
「芦ノ牧温泉駅の駅舎反対側に広がる田んぼから2匹を見た、最後のコマがお気に入りです。2匹の背中で締めくくりたいなと思い、描きました。小さな後ろ姿ですが、きっとさくらはお兄ちゃんに甘えているのだろうと思います。どんな会話をしているのか、想像して読んでいただけたら嬉しいです」
また本作は、背景の桜も見どころのひとつだ。
「桜のつぼみや、満開の桜の表現にこだわりました。春の雰囲気を『グレー』と『ピンク』のみで表現したのですが、たくさんの色が画面に溢れるよりも2色だからこそ、桜のピンクが引き立ったかなと思います」
働くねこの日常や主人公さくらの成長、そして会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の美しい四季について描く、漫画版にゃん旅鉄道。読めば心があたたかくなる優しい漫画を、これからも楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京