初代ねこ駅長のばす先輩は、「お母さん的な存在」
今回のお話のテーマをゆきよみさんに聞いてみた。
「『ぬくもり』がテーマです。冬のストーブのぬくもり、温泉のぬくもり。そして、これまで駅で働いてきたばす先輩とらぶお兄ちゃんのぬくもり。今一人でお仕事を頑張っているさくらは、悩むことも多いけれど、実はたくさんの『ぬくもり』に包まれていると思っています。そんな幸せなさくらを描きたかったです」
さくらたちが気持ちよさそうに入っている温泉は、芦ノ牧温泉 大川荘の「絶景露天風呂 四季舞台たな田」がモデルとなっている。モデルにしようと思った理由や、描くうえで苦労した点を教えてくれた。
「お風呂はもちろん、その景色の美しさも魅力的に感じたため、大川荘様にお願いして描かせて頂きました。たな田をイメージして造られたお風呂が、会津の美味しいお米もイメージされていて、きっと食いしん坊のさくらも大満足のお風呂なのでは?と思います。
ただ、絶景を漫画でどう表現できるのかについては、試行錯誤しました。雪が降ったときの水墨画のような風景をイメージしていますが、読者の方に伝わるとうれしいです」
初代ねこ駅長のばす先輩が初登場するところも、今回の漫画の見どころだ。ゆきよみさんにとってばす先輩は、どんなイメージなのだろう。
「威厳があってかっこいい、冷静に的確な指示を出す『司令塔』のようなイメージです。一見、近寄りがたい雰囲気もあるけれど、実は優しく温かくみんなを包んでくれる。はまったらその魅力から抜け出せなくなりそうな、そんなタイプですね。駅の皆様が『ばすはお母さん的な存在』とおっしゃっていたので、それをもとにキャラクターを作りました」
たった一人で業務を頑張るさくらは、私たちの心に「あったかい桜」を咲かせてくれている
「ばす先輩やお兄ちゃんみたいにはお仕事ができにゃい…」と悩むさくらに、「私たちと同じじゃなくていい」とほほ笑むばす先輩。そして兄のらぶも、「大丈夫だよさくら」とエールを送る。このエピソードには一人で仕事を頑張るさくらに向けた、ゆきよみさんからのメッセージが込められているそう。
「私たちは、自分ができないことばかりに目を向けてしまいがちです。誰にだって、良い所や優れた所は必ずあるのに。私もいつも、『あーあ…』と考えてばかりです。きっと、本能的にできないところに目が向くようになっているんでしょうね。大昔の生存競争していた頃の記憶なのでしょうか。
さくらも気が付いていないだけで、実は沢山のことができていて。漫画だけでなく、実際の芦ノ牧温泉駅のさくらもそうです。お兄ちゃんがいなくなったあとを、たった一人猫駅員として頑張っています。そして私たちに沢山の癒やしを与えてくれています。
私たちの心に『あったかい桜』を咲かせてくれる、さくら。いつかそのことに気が付いて、ばす先輩ともらぶお兄ちゃんとも違う『さくら色の桜』を満開に咲かせる日が来てほしいと、心から願っています」
さくらの成長を見守ってきた本連載も、次回でいよいよ最終回。果たして彼女は「さくら色の桜」を咲かすことはできるのだろうか?
10月30日(月)に発売される
「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」
の書籍は、現在予約受付中。こちらもぜひチェックしてほしい。
取材・文=石川知京