さくらを芦ノ牧温泉駅ファンの皆さんと一緒に見守りたい
今回の漫画のテーマは、「苦手なものに対しての答えを見つけたさくら」です。駅長を務めていた兄・らぶと違い、パトロールが苦手なさくらがどのように業務に向き合っていくのかがポイントです。
葛藤するさくらにぴーちが言った「パトロールしなくてもさくらはさくら」のセリフは、私からさくらへのエールです。私は芦ノ牧温泉駅の黄色いベンチに「ちょこん」と、ちっちゃくて可愛いさくらがいる姿がとても好きです。ただそこにいてくれるだけで、満足なんです。らぶ駅長は駅のパトロールが好きだったけど、漫画の中でさくらは「とっても可愛い箱入り娘」。もしかしたら、実際のさくらは今後、パトロールの魅力に気が付いていくかもしれません。その時は、そんなさくらも芦ノ牧温泉駅ファンの皆さんと一緒に見守れたらいいなと思います。
しかし、「苦手との付き合い方」を漫画にするうえで、苦労も多くありました。私は以前「苦手は努力して得意なものに変えるべき」と考えていました。でも、立て続けに病気になり、体調を崩したことがあったんです。その時期は思うように体が動かせなくて。その際、元気で生きていることって奇跡なんだなと身に染みました。そして、苦手なことに時間を費やす暇なんて人生には無いんだ、とも思いました。元気を取り戻してからは「苦手は苦手なままでいい、もっと得意なことや好きなことを伸ばしたほうがお得だ!」が、私自身のテーマになっています。これもなかなか難しいのですが…(笑)。でも今思うと、結局いくら努力しても、苦手は苦手のままだった気がしています。そんな思いも、今回の漫画に込めました。
お父さんの絵と旅をする女性のエピソードは、芦ノ牧温泉駅の小林駅長から伺った実話が元になっています。毎年のように芦ノ牧温泉駅を訪れる高齢の男性と娘さん。ある時、娘さんだけが駅を訪れ、「父との思い出の地に再び来れました」と、おっしゃったそうです。小さな駅らしい、とてもあたたかなエピソードに胸を打たれました。
駅のベンチでちょこんと佇むさくら。訪れる乗客の心を和ませる彼女の今後と会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の美しい風景を、これからも楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京