春が近づき気温も暖かく過ごしやすくなる今の時期、悩ましいのが花粉症のシーズンでもあること。くしゃみや鼻水、かゆみといった症状が現れる花粉症は、実はヒトだけでなく犬や猫にも起こるもの。意外と知らないペットの花粉症の症状や診断・治療について、動物病院「CaFelier」(東京都目黒区)の小林充子院長に詳しい話を教えてもらった。
■教えてもらったのは小林充子院長
クリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設「CaFelier」の院長。保護猫活動にも取り組み、本気の譲渡会という2週に1回行われている譲渡会にも参加している。
犬や猫も花粉症になる?
――そもそも花粉症とはどんな病気ですか?
花粉症は、樹木や草花から飛散する花粉によって起こるアレルギー症状全般を指します。ほとんどの場合、飛散する花粉は皮膚炎や外耳炎、アレルギー性鼻気管炎、喘息など、その個体がもともと持っている「アレルギー症状」を引き起こすきっかけになります。
――犬や猫も花粉症になるんですか?
ヒトの場合と同じく、アレルゲンとなる花粉で花粉症が起きることがあります。
ヒトの場合、くしゃみや鼻水などの鼻炎症状、それと目がかゆいといったものが主な症状になりますが、犬や猫の場合はそういった鼻炎や目の症状が出る子はむしろ少数と言えます。
一番よく見る症状はやはり皮膚炎です。皮膚が赤くなったり、場合によっては腫れたりしてとにかくかゆみが強く出ます。そのため皮膚を掻きむしり、脱毛、発赤、湿疹、化膿といった症状が出るようになります。顔まわり、耳、首〜前胸部、脇、内股、肢端などに症状は出やすい傾向にあります。
また、外耳炎も非常に多くなります。耳介部分が真っ赤になったり、耳道が腫れ、中から膿が出てきて非常に臭うようになります。かゆみも強いので、後ろ足で引っ掻いたり頭を振ったりします。
もちろん、お散歩に出た犬が、外に出た瞬間にくしゃみをしたり、涙が出たり、猫の場合は窓を開けて換気をしているとくしゃみをしたりすることがあります。
――犬や猫が花粉症になる時期は?
アレルゲンとなる花粉にはいくつか種類があり、それはヒトの場合と同様です。スギとヒノキは飛散の時期がほぼ同じです。また、スギに反応する子はヒノキにも反応する可能性が高いことがわかっているので、2月から5月は要注意時期です。
花粉の主な飛散時期
スギ:2~4月
ヒノキ:3〜5月
シラカバ・ハンノキ(カバノキ科):4〜6月
イネ:5〜10月
ブタクサ:8〜11月
症状や犬・猫それぞれのポイントは?ペットの花粉症の特徴
――犬・猫それぞれの花粉症の特徴はありますか?
犬の場合、アレルギーを起こしやすい犬種があります。柴、シー・ズー、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、フレンチ・ブルドッグ、パグです。
時期や症状に関しては前述の通りですが、あまりにもかゆみがひどく掻きむしってしまう場合は、かゆみ止めの内服をするなど対処はできますので、皮膚の状態が悪くなる前にかかりつけの動物病院を受診されるといいと思います。
猫の花粉症も基本的には犬と同じです。花粉がアレルゲンとなり、主に皮膚にかゆみなどの症状を起こします。ただ、猫はグルーミングをする動物ですので、花粉によって皮膚炎を起こした場合、過剰にグルーミングをすることで、皮膚炎が急速に進行することがあります。犬の場合よりも早めに対処する必要があります。
また、くしゃみや鼻水、結膜炎、といった症状を起こすこともありますし、喘息を起こすこともあります。花粉が原因で喘息を起こす場合、呼吸状態が急に悪化することもありますので、注意が必要です。
――実際に診られた花粉症の犬や猫ではどんな症状がありましたか?
アトピー性皮膚炎のジャック・ラッセル・テリアの子が通院していますが、花粉の時期になると全身が赤くなりかゆみが強く、搔きむしるようになります。最近は花粉が飛散する少し前からかゆみ止めの薬を飲ませるようにしており、そのおかげでひどい皮膚炎は回避できています。また、アレルギーを起こさない体質を目指して腸活にも取り組んでおり、少しずつ効果が出てきているように思います。
猫では、窓辺で日光浴をするのが大好きなキジトラの猫ちゃんがいます。暖かくなって春の陽気が漂ってくると飼い主さんが窓を開けて外の空気を入れてあげていて猫ちゃんもとても喜んでいたのですが、しばらくすると出血するほど耳や耳の周りを掻くようになりました。
かゆみの範囲はどんどん拡がっていき、首まわりが脱毛したり、顔にもボコボコと湿疹ができてしまいました。花粉症と診断し、窓を開けるのをやめて、リビングに性能の良い空気清浄機を設置していただき、猫ちゃんはエリザベスカラーを装着のうえ、濡れタオルで拭き、傷がひどいところは外用薬を塗ってケア。また治療当初はステロイドを使って、かゆみと炎症をコントロールする必要がありました。
花粉症かも…と思ったら、病院や家でできること
――受診の目安となる症状や、診断方法について教えてください。
花粉がアレルゲンになっている可能性がある場合、皮膚炎などの症状が出る時期が限定的になります。たとえば、スギやヒノキに反応する場合は前述の通り、2~5月に症状が悪化しますが、その時期を過ぎると症状は落ち着きます。このように、1年の中で症状が限定的な時期にしか見られない場合は、その時期に飛散する花粉がアレルゲンとなっている可能性が高いと考えられます。
その場合、血液検査でいわゆるアレルギー検査を行い、何がアレルゲンか追究することができます。現状アレルギー検査を行っている検査会社は数社あり、どの程度の数のアレルゲンを調べるかによって価格はかなり異なります。たとえば環境因子のみ10項目ということであれば8000円程度、花粉に限らず食べ物・環境・ハウスダストなどすべて含めて100項目程度、ということになると5〜6万円程度です。ただし、病院によって価格は異なります。
症状が出る時期から明らかに季節性があるという場合は、食べ物のアレルギーである可能性は低いので、この時期にアレルゲンとなる可能性のある環境因子に対するアレルギー反応を調べるといいでしょう。
――ペットが花粉症になった場合、クリニックでできることを教えてください。
クリニックでできるのは、必要に応じてアレルギー検査を行い、それを基にどういった対処をしていけばいいか指導することです。かゆみ止めや炎症を抑えるお薬、抗生剤などの内服薬を処方したり、皮膚の状態によっては薬浴などを行ったりもします。また、アレルギー検査の結果次第では減感作療法などもすることが可能ですが、犬で実施することができる減感作療法はコナヒョウヒダニに対するもののみですので、花粉には使えません。
――花粉症対策として、普段から家庭でもできることはありますか?
基本的には花粉を家に持ち込まない努力が必要ですし、徹底して行えば花粉症はかなりの割合で防ぐことが可能です。
家でできるペットの花粉症対策
1.外出先から戻ったら、玄関前でコートなどを脱ぎ、軽く叩いて玄関に持ち込む。
2.空気清浄機は玄関、リビングなどに複数台置くとよい。特に玄関は重要。
3.窓を開けての換気は極力しないようにする。
4.家の掃除は掃除機をかけるより、水拭きやフローリングワイパーなどを使って極力拭き取るようにし、空気中に花粉を巻き上げないようにする。
5.犬の場合、花粉の飛散がひどい日にはお散歩を見合わせたり、それが難しい場合には花粉が付着しにくい洋服を着せて散歩し、戻ってきたら玄関前で洋服を脱がせる。また可能であれば、玄関前もしくは玄関で濡れタオルやホットタオルなどで軽く全身を拭いてから家の中に入れる。軽くブラッシングまでできればなおよし。
6.猫もいつもより頻繁にブラッシングをする。
いつ花粉症になるかはわからない…もしもの時の備えになるペット保険に注目
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※この記事はau損保「ペットの保険」の特徴を説明したものです。 詳細はau損保ホームページをご確認ください。
募集文書番号:BS0221597(2403)