大人も激しく悔しがる四目並べ『羊とペリカン』
ボードゲーム業界の市場は驚くほど広く、漫画業界の同人誌のように個人がリリースしたゲームが注目を集めることもある。そのなかで、米井さんがおすすめするゲームが『羊とペリカン』。
ルールはいたってシンプルで、ボード上にある自分のコマをタテとヨコに動かし、タテ・ヨコ・斜めのいずれかで4つ並べれば勝ちというもの。最大のポイントは「必ず一度は90度に動かさなければいけない」というルール。これが絶妙にゲームをおもしろくさせる。
「日本の男性が開発したゲームです。ようは『四目並べ』なのですが、タテかヨコに一度コマを移動させたあと、そこから必ず直角に曲げて移動させなければいけないという縛りがあります。最初はよくわからないのですが、だんだん動き方のコツがわかってきます。相手が四目になるのを防ぎつつ、自分の四目を完成させるおもしろさがクセになって、大の大人が夜な夜な大声を張り上げながら『うわぁやられた!』って叫ぶ瞬間が何度もありますから」
上から“落として”色を繋げる『フィッシュクラブ』
フランスのメーカーがリリースしたファミリー向けのゲームで、ルールは単純明快。さまざまな形をした魚のコマを上から落として、自分の色を5つ繋げれば勝ち。
「僕のなかで並べ系ゲームの概念が覆された作品ですね。『タテ・ヨコ・ナナメにいくつか並べれば勝ち』ではなく“落とす”“繋げる”という要素は、シンプルですがすごい発想だと思いました。コマの形状から落としたあとの展開を予想したり、相手が繋げようとしている群れを邪魔したり、バウンドする不確定要素の運もあったりで、これまで知っていた並べ系ゲームと似て非なるおもしろさが詰まっていてびっくりしました」
正体不明の正体隠匿系五目並べ『IQ5』
米井さんがネットオークションで購入した海外製ボードゲームで、インターネットにもほとんど情報がない、謎に包まれたゲーム『IQ5』。垂直に立てたずっしりと重いボードを挟んで座り、空いた穴に交互に棒を差し込んでいき、5つの色を繋げれば勝ちというもの。
ポイントは、棒の両側の色が異なっていて、赤・青・黄の3色の組み合わせのいずれかになっていること。そして、棒を差し込むと相手からは自分側の色が見えないこと。相手にバレないように、自分側の盤面で5つの同じ色をタテ・ヨコ・ナナメに繋げるのがこのゲームの魅力で、この発想はほかに類を見ない。
「正直、これが正しいルールなのかどうかは私にもわかりません。どなたか知っている方がいればご連絡いただきたいくらいです。でもその謎めいた感じも並べ系ゲームのおもしろさのような気もします。さらに言うと、このどっしりとしたボードにも何か秘密があるはずです」
昭和の子供たちを夢中にさせた『コレゴ』
米井さんが「昭和時代の子供たちがどんな気持ちで遊んだのか、追体験したくて手に入れました」と話す、知る人ぞ知るゲーム『コレゴ』。
遊び方は五目並べをベースにしたもので、表向けにした手駒でボード上にある裏向けにされたコマを外に押し出しながら、タテ・ヨコ・ナナメで5個並べたら勝ちというもの。押し出されたコマは自分の手駒になるが、それが自分の色なのか相手の色なのかわからない。そのため、自分のターンで自分の色を置けない場合もあり、その運要素がこのゲームをおもしろくするという。
「プラスチックでできた専用のボードやコマを手に取ると、このゲームのために誰かが企画して、会議を通り、製品化され、店頭に並び、誰かが買って、遊んでいた。こういう過程を経たゲームが時空を超えて今ここにあるということを想像して、ときめきが収まりません。運要素も非常に重要なゲームなので、大人と子供が一緒に遊べるアットホームさも心に響きますね」
4人同時にわいわい楽しむ『ワンツースリーゲーム』
並べ系ゲームにアクション要素を取り入れたのが、昭和に作られた『ワンツースリーゲーム』。ボード中央の3×3の穴を目掛けて専用の台からコインを転がして、9つの穴に自分の色のコインを落としていき、タテ・ヨコ・ナナメに3つ並べれば勝利となる。4人まで同時に遊べるので、相手のコマが入っている穴に自分のコマを落として色を「上書き」したり、スポーツのように指先のテクニックが求められるのが特徴。
「4人でできる三目並べですね。1人ずつ順番にコインを転がしてもいいですし、順番は関係なく同時に転がしてもいいですし、アナログなボードゲームならではの自分でルールを決められる自由さがあります。2人対2人のペア戦もおもしろいですし、遊び方次第でいろんな楽しみ方ができるゲームですね」
このように並べ系ゲーム愛を爆発させてくれた米井さんは、取材中ずっとゲームに興じながら語り続けていたにも関わらず、「まだまだおもしろいものがあるので、これに特化して対戦してくれる奇特な方がもしいれば、ぜひ大阪・昭和町にあるボードゲームカフェ『デザートスプーン』でお会いしましょう。いつでも挑戦は受けますよ!」と、尽きることのない情熱を語ってくれた。
米井さんと同じくボードゲームを愛する人はもちろん、「これから始めてみたい」という人も、米井さんと一戦を交え、ボードゲームの1ジャンル“並べ系ゲーム”の深い魅力に触れてみてはいかがだろうか。
取材・文=橋本未来