愛知県岡崎市のご当地キャラ「オカザえもん」が愛される理由とは?実はシャイでミーハーな素顔に迫る

2023年3月15日

「オカザえもん」をご存知だろうか。YouTuber『東海オンエア』などの活躍により、話題になることが増えた愛知県岡崎市のご当地キャラクターだ。

公式サイトによると、そのプロフィールは岡崎市の市制記念日と同日の7月1日生まれのO型で、身長180センチ・体重60キロ、特技は自己流ダンス、趣味はジャズ音楽鑑賞、現代美術鑑賞。顔に「岡」、胸に「崎」をあしらったユニークなルックスに反して、多くのご当地キャラのなかでも極めて文化的なイメージが強く、どこか侮れない印象を持つ不思議なキャラである。

そんなオカザえもんは、どのようにして生まれたのだろうか。そして、その活動にはどんなものがあるのだろうか。今回は担当者に取材を行うと共に、当のオカザえもんにも話を聞いた。

ご当地キャラ、ゆるキャラのなかでもコアな人気を受ける「オカザえもん」


当初は「美術作品」として発表された「オカザえもん」

2012年、岡崎市で「アート&ジャズ2012」というイベントが開催された。これは「あいちトリエンナーレ2010」の開催成果を普及し、「あいちトリエンナーレ2013」の開催機運を盛り上げるために「あいちトリエンナーレ地域展開事業」として、岡崎市の街中を会場に現代美術の展示とジャズイベントを行ったものだ。

13組15名の美術作家が「それぞれの場所」に向き合いながら制作して作品を展示し、その出品アーティストの1人が発表したのがオカザえもんだったという。「サイト・スペシフィックな作品を展示する」という主旨のイベントの性質上、「場所に向き合う」=「岡崎に向き合う」という解釈で岡崎市のご当地キャラクターを考案して展示したそうだ。

文化的なイメージもあるオカザえもんの出自こそが「アート」だった


そのユニークなルックスで、同イベントでもおおいに注目を浴びたオカザえもん。展覧会終了後もそのキャラクターデザインを市内外でいろいろな人が活用するようになり、浸透していった。

この誕生秘話についてオカザえもんにも話を聞いてみたが、「それらに関しては拙者は知らないでござる」とそっけない。あちこちで積極的に活躍するオカザえもんだが、自分の話になると急に口ごもるというシャイな一面も持ち合わせているようだ。

オカザえもん×アーティストは相性抜群?

オカザえもんは、もともとアートとジャズのイベント出身。ゆえに文化的なイメージや活動を行うことが多いが、後にオカザえもんは「岡崎アート広報大臣」にも任命され、さらに文化的な場面での活躍が目立つようになった。

さらに、オカザえもん関連の楽曲を岡崎や名古屋エリアの音楽アーティストたちが次々に発表。なかにはオカザえもん自身が作詞した楽曲などもあり、やはりアーティストたちとオカザえもんは共鳴し合うところがあるようだ。

オカザえもんは、「女性雑誌で松本潤さんと一緒に掲載されたことがあるでござる」(※偶然に表紙の切り抜き画像で一緒に掲載されただけ)、「岸部一徳さん、大森南朋さん、加瀬亮さん、岸本佳世子さんらが出演する映画『鈴木家の嘘』にも出演したことがあるでござる」と、有名人との共演に関しては鼻息荒く教えてくれた。ややミーハーな一面があるのかもしれない。

2022年に実施された「オカザえもん10周年芸術祭」で描かれた「大オカザえもん絵」

多くの参加者たちによる似顔絵やメッセージに、オカザえもんも大喜び!


一方で文化・芸能関係だけでなく、オカザえもんは知的な分野、モータースポーツなどの分野での活動もある。

2022年には岡崎市の基礎生物学研究所の公開イベントにも参加し、川などに生息する生物・プラナリアを参加者と一緒に学んだり、「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」という自動車のラリーイベントにも参加。オカザえもん自身が幅広い分野に造詣が深いこともあるだろうが、同時に、アートや文化以外の分野でもオカザえもんを愛する人が多いことも、活躍の場が広い理由だろう。

この点についても聞いてみたが、「しかし基本的にはお金がなくて困っておりまする」と急に切実な話をし始めるオカザえもんだった。

基礎生物学研究所でプラナリアを学ぶオカザえもん

ラリーイベントにも参加


オカザえもんの経済効果は一時42億円に!?

こういったオカザえもんの幅広い活躍の効果もあり、これまでの受賞歴や影響力は、ほかのご当地キャラと比較しても抜きん出たものになっている。その一部が以下のものだ。

・「ご当地キャラ総選挙 2013」第2位
・「ゆるキャラグランプリ2013」第22位
・「ゆるキャラグランプリ2019」第10位
・2013年度の経済効果 42億円

「1位」はないが、ある時期限定の急速な人気を果たしていない点が、結果的にオカザえもんが長期的に愛され続ける理由のようにも映る。特に2013年の経済効果「42億円」には驚かされるが、前述の「基本的にはお金がない」というオカザえもんを、もっと多くのメディアがギャラ有りで起用することを願う。

オカザえもんは自身の活躍について、「依頼があれば出没いたしますし、依頼がなくなれば、そのままフェードアウトする可能性もなきにしもあら〜ず」と語ってくれた。現状に抗うことなく、時の流れに身を任せるオカザえもん。その姿勢もまた、多くの人々の心を癒やしているのかもしれない。

オカザえもんはどこに行っても人気者だ


「泣いていた子供が、拙者を見て笑顔になってくれた」

今日では、オカザえもんの支持は岡崎市を飛び越え、全国にも派生。ここ数年は岡崎市外、愛知県外での出演依頼も増えつつあるという。

最後に、オカザえもん自身の心に響いたエピソードを教えてもらった。

「テレビのロケの撮影中、イベント出演も出没告知もしてないのに、埼玉県から拙者に会いたくて『車で岡崎まで来た』というご夫婦と偶然出会えたことがあったでござる。これは本当にうれしかった思い出でありまする。もう1つは、小学生くらいのお子さんが自転車で転んで泣いている横を、たまたま車で通りがかることがあった際のことでござる。偶然、信号が赤になり、泣いているお子さんのすぐ横に停まったので、窓を開けて拙者の顔を見せたところ、そのお子さんは急に泣き止んで笑いだしてくれたでござる。拙者を見て泣き出す子供もいるでござるが、笑ってくれたことが拙者はとてもうれしかったでありまする。

この2つのエピソードは、永遠に忘れないでござる。これからも拙者は地味にジワジワ活動を続けるでござる。とにかく岡崎市に観光に来てくだされ〜」

オカザえもん(左)の4歳の息子・オカザえもんJr.(右)


取材・文=松田義人(deco)