1993年の発売から根強い人気を誇り続ける「ブタメン」。時代の変化とともに、駄菓子屋だけでなくスーパーやコンビニでも販売されるようになり、平成生まれ世代を中心にヒットを遂げた“ミニカップラーメン”だ。
親しみやすいネーミングと駄菓子らしい手軽さ、本場のとんこつラーメンの味わいを兼ね備えたブタメンは、今から30年前、どのようにして誕生したのだろうか。今回は、販売元である株式会社おやつカンパニーの担当者に話を聞きながら、そのストーリーと誕生の秘密に迫る。
「ベビースター ミニカップラーメン」シリーズの3番目の味として誕生!
ブタメンを手掛けるのは、「ベビースターラーメン」でおなじみのおやつカンパニー。1948年に創業し、1959年に「ベビースターラーメン」(当時は『ベビーラーメン』)を発売した。
その後、ミニカップラーメン「ベビースター 当りら~めん(しょうゆ味/カレー味)」を1987年に発売すると、商品ラインナップの拡充を図るために3番目の味として「ベビースター 当りら~めん ブタメン(とんこつ味)」を新たに開発し、1993年に発売したという。これがブタメンの始まりだ。ちなみに、3番目に「とんこつ味」が選ばれた理由は、1980年代に首都圏を中心に「とんこつラーメン」が流行していたからだそう。
ブタメンはもともと子供を対象にした商品だったが、一方で“本場のとんこつラーメンを再現する”ことには惜しみない力が注がれた。当時の開発担当者はたびたび九州に出張し、現地のとんこつラーメンを片っ端から食べまくり研究を重ねたという。ブタメンの特徴である、「とんこつラーメンの独特のクセは抑えつつクリーミーな味わい」は、こうした努力の末に完成した。
スープは豚だけでなく鶏や野菜、香辛料などをバランスよくブレンドし、味付け麺と絡まり合うことでコク深いこってりとしたとんこつラーメンに仕上がった。「親しみやすくインパクトのあるネーミングを」といった理由から、そのものズバリの「ブタメン」という商品名にし、大ヒットに至った。
そして、以降はさらなる味わいの拡充を目指し、「しょうゆ味」「タン塩味」「カレー味」もラインナップ。それぞれ味わいや原材料は異なるものの、“ブタメンならでは”のとんこつの味わいを必ず感じられるものになっている。
なぜ目が回っている?「ブタメン」のキャラクター
ここまでがブタメンの誕生から今日に至るまでの変遷だが、もう1つ注目すべきものがある。パッケージに描かれた、あのブタのキャラクターだ。
1993年前後、他社商品で漫画のキャラクターが入ったパッケージに人気が集まっていたため、ブタメンにもネーミングに合致するキャラクターを考える必要があった。そこで当時の企画担当者が「ブタメンくん」を描き、パッケージに採用されることとなった。
その目はグルグル回っている。「どうして目が回っているのか?」と担当者に聞くと、「ブタメンのあまりのおいしさに目が回っています」とのことだ。
また、当初「ブタメンくん」には長らく名前がなかったという。しかし、その支持の多さから、グッズ展開の要望が増えたことを機に名前を決めることになった。名前の最終候補は「ブースケ」、「ブタノスケ」、「ブタッピー」、「ブタメンくん」の4つ。Twitterで投票を実施したところ、発売から28年の時を経た2021年4月、「ブタメンくん」に決定した。
駄菓子なの?ラーメンなの?“お湯を注ぐこと”のニーズ
どちらも人気商品であるがゆえ、親子的な言われ方をすることもある「ブタメン」と「ベビースターラーメン」。どちらも駄菓子として親しまれているが、ベビースターラーメンはラーメンをそのまま食べるスナック菓子である一方、お湯を注いで食べるブタメンはほかのカップラーメンと比較されることが多いという。ただし、ほかのカップラーメンと大きく異なる点は「そのサイズ感にある」と担当者は言う。
「ブタメンは“子供のおやつ”という印象が強いと思いますが、ちょうどいいサイズのミニカップラーメンなので、スープ代わりとしてお弁当のお供に、夜食に、そして『通常のカップラーメンでは多すぎる』と感じる方にもご支持いただいています」
今や2世代で愛されるようになった「ブタメン」
ブタメンのニーズの多様化には、たとえば、子供の頃におやつとして食べていた平成生まれの人が大人になり、それでも「あの味が好きだ」と軽食として食べるようになったことも大きな理由の1つかもしれない。だとすると、ブタメンは30年間の販売により、2世代にわたって愛されるブランドになったと言ってもいいかもしれない。
ここまでブタメンの誕生から現在に至るまでのストーリーを紹介したが、担当者によれば、こういった多様化したニーズに呼応し、「30周年以降もより一層、商品開発やアレンジなどの提案を行っていきたい」という。
「『ブタメン』ブランドの商品は、気分に合わせて味を選べる楽しさだけでなく、プレゼントキャンペーンや創造性を育む食べ方アレンジなどの“わくわくする楽しさ”をお届けすることを心掛けています。ブタメンは具がないシンプルさゆえに、身近な食材をほんの少しプラスするという楽しみ方もあり、駄菓子屋でブタメンを食べていた子供たちは、豊かな創造力でほかの駄菓子をトッピングして楽しんでいました。現在は時代の変化もあり、そのような光景を見ることは少なくなりましたが、当時の子供たちと同じような“楽しさ”を味わってほしいと、近年はブタメンにトッピングをして楽しむ食べ方提案にも力を入れています。このような、ほかのカップ麺ではできない楽しみ方ができることが、現代でも駄菓子らしさを兼ね備えたブタメンが愛され続ける理由だと思っています。さらなる未来に向けて、ブタメンの味わい、楽しさを広めていけるよう、今後も積極的にプロモーションしていきたいと考えています」
撮影・取材・文=松田義人