世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、各企業でもさまざまな取り組みが行われているが、具体的にはどのようなことが行われているのだろうか?今回は、光学機器製造の大手メーカー「リコー」で360度カメラ「RICOH THETA」を扱っている広報担当者にインタビューを実施。SDGsに取り組んだ経緯や、具体的な活動内容について聞いた。
SDGsってなに?
SDGsは、国連に加盟する全ての国が、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成。アジェンダでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
360度映像が映し出す「社会課題の現場」
――リコーは現在、国際的な非営利団体「コペルニク」(※)と連携して、社会課題およびSDGsへの理解を深め、その解決策を生み出す“きっかけづくり”に取り組まれています。一緒に取り組むようになったきっかけを教えてください。
※コペルニクは、途上国で最も支援が届きにくい地域(「ラストマイル」 と呼ばれている)において、貧困削減に繋がる革新的なテクノロジーの開発、検証、普及に取り組んでいる。
【広報担当者】始まりはコペルニクでした。彼らが環境汚染や貧困などをはじめとする社会課題現場の360度映像をポータルサイト
「VR for SDGsプラットフォーム」
で公開しており、リコーとしてもその活動に賛同し協力することになりました。
――SDGsをどう実践していくのでしょうか。
【広報担当者】2021年1月に、インドネシアにおける「社会課題の現場を360度映像で捉えるVR for SDGsキャンペーン」を実施しました。これは、社会課題に直面する人々の現場を360度カメラ「RICOH THETA」で撮影し、インドネシアの若年層をターゲットに「SDGsをテーマにした動画」を募集するキャンペーンです。応募者の中から優秀な参加者3名をフェローとして選出。その動画を「VR for SDGs」で公開しています。今後、これらのコンテンツは企業や教育機関でグローバルに活用されます。
また、4月から開始した第2弾では、国連ボランティア計画(UNV)とも連携し、対象地域を限定せず、社会課題の現場を捉えた360度動画コンテンツを「VR for SDGsプラットフォーム」に掲載しました。こちらも第1弾と同様に、コペルニクが連携する企業のリサーチ活動や、大学などの教育現場で活用するほか、オンラインイベントも開催し、動画を紹介・解説していきます。
360度映像でSDGsへの理解促進につなげる
――こうした取り組みを始めた経緯は?
【広報担当者】リコーとしては長らくSDGsに取り組んでおり、2020年には日経SDGs経営大賞で大賞を受賞していますが、「360度カメラRICOH THETA」を扱う事業部門としてもSDGsに積極的に貢献したいという思いがありました。そんなときに、コペルニクが「RICOH THETA」で撮影した360度映像を活用して「VR for SDGsプラットフォーム」を開発することになり、リコーにお声掛けいただいたことがきっかけです。
コペルニクは既にメルボルン大学(オーストラリア)やガジャ・マダ大学(インドネシア)などで360度映像を使った授業の実証実験を行っており、360度映像で伝えることの効果の高さを実証していたため、これを拡充していくことでSDGsへの理解促進につながると考え、パートナーシップを結んでいくことを決めました。
――「RICOH THETA」を活用するという取り組みはリコーならではですね。SDGsを実践してどのような反響がありましたか?
【広報担当者】社会課題解決に取り組む国際機関から同様の取り組みを連携したいと問い合わせをいただくなど、社会課題の現場を360度映像で伝える価値を活用しようとする団体が出てきて広がりを感じています。
誰も取り残されない、平和で安全な社会を目指す
――SDGsの取り組みの先に目指す社会はどんな社会でしょうか?
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で「leave no one behind」と誓っている通り、誰も取り残されることがなく、進展した技術を享受し、平和で安全な生活が送れる社会を目指します。そのためには、個人、企業、あらゆる団体、機関が現在世界各地で発生している社会課題を理解し、解決に向けた行動を取ることが重要です。その理解促進のために360度映像が活用できると考えています。