世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、各企業でもさまざまな取り組みが行われているが、具体的にはどのようなことが行われているのだろうか?今回は、世界的タイヤメーカーの「ブリヂストン」に、SDGsに取り組んだ経緯や、具体的な活動内容について聞いた。
SDGsってなに?
SDGsとは、国連に加盟する全ての国が、持続可能でより良い世界を目指すための2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成。アジェンダでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
「最高の品質で社会に貢献」という創業当初からの使命を貫く
――まずは、SDGsの取り組みを行うようになった経緯やきっかけについて教えてください。
【広報担当者】SDGsへの貢献をより明確に打ち出したのは、2020年に策定した中長期事業戦略です。その中で「2050年サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を新たなビジョンとして掲げ、SDGs達成に貢献するビジネスモデルの実現を目指しています。
一方、当社は、1931年の創業時から「最高の品質で社会に貢献」という使命を掲げています。したがって、SDGsという枠組みで語るよりずっと以前から、安心・安全な移動を支える活動や社会貢献活動など、持続可能な社会に向けた取り組みを続けているのは、当社ならではの特徴と言えます。
重点領域「Mobility」「People」「Environment」
――では、活動内容の特徴を教えてください。
【広報担当者】ブリヂストンと世界中で働く従業員は、業界のグローバルリーダーとして、イノベーションと先進技術を通じて、人々がより快適に移動し、生活し、働き、そして楽しむことに貢献しています。そのために、「モビリティ(Mobility)」「一人ひとりの生活(People)」「環境(Environment)」という3つの重点領域を設定しています。
3つの重点領域を中心に、企業活動全般、バリューチェーン全体を通じてSDGsの17のうち13の目標達成に向けてさらに貢献していきます。
「モビリティ」は、その名の通り、ヒトとモノの移動に関する領域です。誰もがより快適に、安心・安全に移動できるよう、先進的な技術やソリューションを通じてモビリティの進化に貢献していくということ。
「一人ひとりの生活」は、人々がより健やかに安心して暮らしていくために、一人ひとりの生活と地域社会を支えること。当社グループの拠点がある世界各地域で、次世代の学びを支えるための教育や訓練の機会拡大はもちろん、自然災害による被災者への支援、防災・減災への取り組み、健康増進プログラムなど、さまざまな社会貢献活動も行なっています。
そして「環境」は、2050年を見据えた環境長期目標、および、昨年新たに策定した環境中期目標「マイルストン2030」を軸に、事業の成長と環境影響や資源消費の拡大を切り離すということへの挑戦を加速させています。
――「モビリティ」「一人ひとりの生活」「環境」の領域において、具体的な活動としてはどのような内容になりますか?
【広報担当者】まず「モビリティ」についてですが、モビリティ業界はCASE、MaaSといった大変革期を迎えています。身近なところでは、カーボンニュートラルへ向けたEV化・電動化や、カーシェアリングサービスの普及拡大があり、こうしたモビリティの進化により、タイヤに求められる性能も大きく変わりつつあります。
1995年に誕生した低燃費タイヤの「ECOPIA」は低燃費性能(タイヤがころがりやすいのでクルマの燃費がよくなる)と、安全性能(濡れた道でもしっかり止まる)、ライフ性能(長持ち)を高次元でバランスさせることを追求したタイヤで、みなさんがクルマに乗っているときのCO2排出量削減に貢献しています。現在では、ブリヂストンの乗用車用タイヤ全商品の8割がECOPIAとなっています。
こうしたタイヤを通じた環境貢献の歩みを止めることなく、2019年には、EV化・電動化、カーシェアリングに適した革新的な次世代環境対応技術「ENLITEN(エンライトン)」を開発しました。この技術は、ガソリン車の走行時のタイヤ起因によるCO2排出量を約30%削減するとともに、タイヤに使用する部材重量を約20%削減することで資源生産性向上へも貢献しています。
「一人ひとりの生活」については、さまざまな角度から社会課題を解決する活動を展開しています。当社グループは、業界を牽引するタイヤメーカーとして、世界各地で交通安全教育を実施するなど、交通安全に重点的に取り組んでいます。
また、当社はオリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーであり、「スポーツを通じてより良い世界の実現を目指す」活動の一環として機材の提供などを通じたアスリートの支援も行なっています。
パラトライアスロンの秦由加子選手向けには、タイヤの技術を応用し、耐摩耗性能を確保したグリップでさまざまな路面を走れる義足ソールを開発しています。パラアスリートが直面する課題の解決に向けた革新的な機材やソリューションの提供によって、多様性やインクルージョン、平等への取り組みを推進しているという点もぜひ知っていただきたいですね。
また、さまざまな活動を通じて「環境」にも貢献していますが、最近の事例としては、カーボンニュートラル化へ向けて、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでいます。CO2削減については2021年に欧州内のすべての新品タイヤ工場において、使用する電力の100%再生可能エネルギーへの切り替えが完了しました。また、2021年6月、および7月より国内タイヤ4工場で購入電力の100%再生可能エネルギー化を達成しています。
エコタイヤで環境にも財布にも優しく
――いずれも環境や人に優しい取り組みばかりですね。
【広報担当者】ありがとうございます。消費者に身近な実例だと、街を走るトラックやバスのタイヤは、使い終わった後、台の部分を再利用し、タイヤの表面だけを張り替えて使用できることができるのをご存知でしょうか?
摩耗したタイヤのトレッド部分(車両が走るときに路面に接地する部分)を新しいものに貼り替え、タイヤを再利用することを「リトレッドサービス」といいます。ブリヂストングループでは、トラック・バス用タイヤでリトレッドとメンテナンスサービスを組み合わせた運送ソリューションの一つとして、再利用を通じた環境とお客様の安全性・経済性・生産性を両立するサブスクリプションサービスも展開しています。
――サステナビリティの観点からみてもそうですが、安全という点でも、今や必須のサービスと言えそうですね。では、乗用車を運転する方に向けて、SDGsを取り入れる工夫などもあれば教えてください。
【広報担当者】SDGsを生活に取り入れる一つの方法として、タイヤ交換時に先ほどご紹介した低燃費タイヤ「ECOPIA」を選んでみるのはどうでしょうか。ECOPIAはすり減りにくいため交換サイクルを長くすることができると共に、転がり抵抗を低く抑えて燃費の向上を実現する、お財布にも環境にもやさしいタイヤです。
このように、タイヤに限らず、さまざまな企業でSDGsに貢献する商品開発が行われていますので、日々使うものを工夫してみるだけでも大きな違いになると思います。選択を少し変えるだけで日々の生活がサステナブルに変わっていくといいですね。
――ありがとうございます。では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします!
【広報担当者】車を運転するのが好きな方もいれば、車を運転されない方もいらっしゃると思いますが、人々の生活は車やさまざまなモビリティに支えられています。
例えばコロナ禍において、通販を利用される方が増えていますが、届けるのは小型のバンやトラックです。タイヤを通じて安心・安全な物流や社会のインフラを足元から支えるとともに、環境にもやさしい商品やサービスをご提供することで、これからもサステナブルな社会づくりのお手伝いをしていきたいと考えています。