「すべての子供たちが、必要な医療を受けることができ、その家族はサポートされ、子供たちの治療に積極的に関与できる世界を目指す」というビジョンのもと、「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は病気を持つ子供とその家族の支援を行う施設として立ち上がり、2022年11月時点で、世界45カ国、376のハウスを展開している。
日本にも「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が全国に12ハウスあるが、利用家族は1人1日1000円でハウスを利用することができる。この運営費は全て、個人や企業からの募金や寄付でまかなわれており、多くの支援者のおかげで成り立っている。
「SDGs」「サステナブル」という概念がまだなかった48年前に立ち上がり、今日まで続く「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の取り組みをご紹介したい。
発祥はアメリカ・フィラデルフィア。多くの人たちの支援のもとで設立!
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の誕生は、アメリカンフットボール選手として活躍していたフレッド・ヒルの3歳の愛娘が白血病にかかり、入院したことがきっかけだった。娘の入院先でフレッド・ヒルが見たものは、狭い病室で子供の傍らに折り重なるようにして寝ている母親や、やむなく病院の自動販売機で食糧を購入し、簡素に食事を済ませる家族たちだった。
フレッド・ヒルもまた娘の入院先が自宅から遠く離れており、精神的にも経済的にも苦痛を感じ、「病気と闘う子供の家族が、少しでも安らげる滞在施設が病院の近くにあれば良いのに」と、病院近くにあったマクドナルドの店舗オーナー、病院医師、フットボールチームの仲間の協力を得て募金活動をスタート。
彼らの切実な願いを多くの人たちが分かち合い、1974年にフィラデルフィア新聞社が提供してくれた家屋を改造し、世界初の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が誕生した。
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」と、日本マクドナルドは別団体
ところで、「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は「マクドナルド」の名がついているため、たとえば日本では、日本マクドナルド社が運営しているように誤解される機会がままあるというが、実際は日本マクドナルドは支援企業の1社であって、全くの別団体である。
ただし、日本マクドナルドは、同社のCSR活動の一環として、日本における「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の運営を行う財団の設立当初よりミッションパートナーとして支援をしており、全店での募金箱の設置、アプリでの10円募金付きクーポンの配信、チャリティキャンペーンの実施、さらに社員や店舗クルーがボランティアとしてハウスで活動するなど、支援企業として、強いバックアップを行っている。
また、「ドナルド・マクドナルド・ハウス」に「マクドナルド」の名が掲げられているのは、前述のフィラデルフィアにおける「ドナルド・マクドナルド・ハウス」第1号ハウスを設立した際、マクドナルドの店舗オーナーがシェイクの売上を団体に寄付し、最大の支援者となったことが大きな理由だ。「ドナルド・マクドナルド・ハウス」では、マクドナルドのこうした人力に感謝の意を表し、全世界のハウスや財団の名前には共通して「マクドナルド」の名を付けているという。