日本初!国産雑穀100%『雑穀ミルク』を生んだ、ポッカサッポロ若手社員のディレクション術とは

2023年7月18日


右も左もわからないなかで、プロジェクトをうまく進めるために工夫したこと

「協力する側も“やらされている”感じになってしまうと、ただの負担になってしまう」気持ちよく動いてもらうために、しっかりと事前準備や説明を徹底した【撮影=三佐和隆士】


――『雑穀ミルク』を開発するなかで、特に苦労したことを教えてください。
【𥽜夏美】一番大変だったのは関係各所との調整ですかね。初めての商品担当ということもあり、そもそもどこから手をつければ良いのかさえわからない状態だったので、発売時期から逆算して、かなり早いタイミングからいろいろな部門の方にヒアリングや相談などをして準備しました。デザイン、開発、生産、原料調達、現地の原料パートナーの方…など、相当な人数を巻き込んでボールを動かす側なので、一つひとつ進めていくのに苦労はしました。

【𥽜夏美】ただ、私の強みとして営業統括部にいたころに関わる部門が多かったことで、この人に相談してみれば窓口を教えてくれるのでは、どの部門に確認したほうがスムーズに進行できそうか……といった動きの全体感をつかめていたので、その点は過去の経験を活かせて良かったと思います。もちろん何でもかんでも聞けばいい、というわけではないので、「自分のなかではこれが必要だと思っていてこうしたいけど、そのためにどうすればいいか」という目的をハッキリと持ち相談することを心がけていました。

【𥽜夏美】あとは、最初のキックオフの段階で「植物性ミルクとしてこの商品にどのような可能性を見込んでいて、こんなコンセプトでこういうことをしたいんだ」ということを整理して伝えるよう工夫していたことで、その後の連携などが少しはスムーズに進められたのではと思います。やっぱり協力する側も“やらされている”感じになってしまうとただの負担になってしまうので、同じ目標を持ち動いてもらえるよう「一緒にこの商品を育成したいんだ」という思いを伝えることは意識しています。

【𥽜夏美】もうひとつは、商品名です。デザイン担当者とは昨年の2月から検討を始めていて、10回以上デザインの比較検証を繰り返したのですがそこから半年以上決まらず……。というのも、「雑穀」というワードから抱く印象と、飲料=雑穀を飲むという行動が従来の雑穀の食体験もあり直接的に結びつきにくいため、「雑穀ミルク」とストレートな表現にすることによって、手に取ってもらえなかったら悔しいな、と。ただ、現地の方にお話を伺うほど雑穀の魅力への期待感が高まりましたし、若年層を中心とした事前調査の際に雑穀は健康的なポジティブイメージが強いことも確認できました。何度も試行錯誤しながら、雑穀のことを調べたり、コンセプトに立ち返ったりということを繰り返して、最終的にはやっぱりこの「雑穀」というワードをちゃんと使って訴求したい、雑穀の印象自体をより魅力的なものにしていきたいというところに落ち着きました。去年は本当にずっと雑穀のことばかり考えていました(笑)。

「植物性ミルクのような選択肢があることによってどのような方も一緒に食事を楽しめる環境を増やせる」【撮影=三佐和隆士】


――次に、植物性ミルク領域を担当されている𥽜さんから見て、その魅力や今後の成長性についてお考えを教えてください。
【𥽜夏美】大豆やアーモンド、雑穀にしても、それぞれの素材で栄養成分や味わいが異なるので“植物性ミルク”というひとつのカテゴリーとしての幅の広さはすごくおもしろいと思いますし、知っていくことで食生活が豊かになるというところも魅力だと感じます。コレステロールゼロですごくヘルシーな素材ですし、あとはアレルギーや乳糖不耐症の方が抱える「みんなと同じ食事ができない」というお悩みの手助けにもなればと思っていて、現代ではアレルギーの品目も増えているので、植物性ミルクのような選択肢があることによってどのような方も一緒に食事を楽しめる環境を増やせる、そういったところも魅力のひとつだと考えています。

【𥽜夏美】またインバウンド向けという観点でも、動物性のものがNGな方に安心して選択していただけるので、日本でもまだまだ今後成長していく伸びしろのある市場だと思っています。アーモンドミルクは日本に上陸して今年で10周年となるのですが、販売金額が20倍という規模感に成長していることを考えると、他の植物性ミルクも同様に市場成長が期待できるカテゴリーであると捉えています。

ブランドや業界を横断して、食や健康の課題に貢献していきたい

「私も雑穀の魅力に“恋”をしたひとり」。商品や業界に捉われず、魅力発信のための新たな可能性を探っていきたいと意気込みを語ってくれた【撮影=三佐和隆士】


――お仕事をするうえでのモチベーションはなんですか?
【𥽜夏美】やっぱり自社の商品などを通じて健康にお役立ちできていると感じられる瞬間がモチベーションになっていると思います。SNSでの反響や口コミを見ていて、喜んでくれる人がいる、その先の誰かの笑顔や健康につながっていると感じることが原動力になっています。『雑穀ミルク』に関しては発売直後にSNSでのプロモーションも行ったので、「味が好き」とか、「コンセプトに共感した、この商品がすごく好きだから飲み続けたい」といった声をいただいて、ターゲット通りの方にちゃんと届いているという実感があって、文字上のコンセプトだったところから形になって、それがちゃんと届いていて、少しでも健康にお役立ちできたなと感じられたのは、すごくうれしかったところですね。

ーー今後、挑戦していきたいことや野望を教えてください。
【𥽜夏美】担当している「植物性ミルク」というカテゴリーはまさに自分が昔からやりたかったことで、商品やサービスで健康意識を持ってもらうきっかけを作るとか、健康寿命の延伸に貢献したいというところが軸になっているので、まずは発売したての『雑穀ミルク』をどう育てていくかというところに挑戦していきたいと思っています。また、単体で知ってもらうだけではなくもうひとつの担当であるアーモンドミルク商品も含めて、植物性ミルクのおもしろさをブランド横断で盛り上げるような見せ方というのも今後やっていきたいですね。

【𥽜夏美】加えて、他社様も含めて国産訴求・応援消費という軸を持っている商品や、健康に貢献したいという想いを持っているブランドなどとコラボしたりして盛り上げていくということにトライしてみたいですね。これは食品業界に限らずで、同じ目的やコンセプトを持ったものと相互に盛り上げていけたらな、と思っています。世の中にはエシカル消費やSDGsの意識を高く持って活動している学生さんも多いので、そういった活動を積極的にしている方とも何かおもしろいことができたらいいなとか、そういう新しいタッグで食や農業を盛り上げていきたいですね。

――ありがとうございます。最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
【𥽜夏美】ブランドサイトなどで“あなたも「雑穀」に、恋をする”というキャッチコピーを使用しているのですが、自分自身もそれを体感したひとりです。日本の伝統的な食材でありながら、まだその魅力は多くの方に伝わっておらず、雑穀=脇役、定食の選択肢にあったら選ぶかなくらいのイメージが多いのではないかと思います。それが、知っていくうちに「雑穀って主役にもなれるポテンシャルがあっておもしろい素材じゃん」というふうにどんどんハマっていく、恋をする感覚みたいだと感じたところから生まれたワードです。ぜひ『雑穀ミルク』をきっかけに、国産雑穀のおいしさやおもしろさを体感いただけたらうれしく思います。

この記事のひときわ #やくにたつ
・目的と自分の考えを持ったうえで相談する
・目標や想いを説明し共感を得ることで連携がスムーズになる

【プロフィール】𥽜 夏美(はぜ・なつみ)
1996年生まれ。2019年、ポッカサッポロフード&ビバレッジに新卒入社。営業統括部 フードサービス企画グループを経て、2021年マーケティング部門に。植物性ミルクのカテゴリーで戦略立案や商品開発を担当している。

取材・文=山本晴菜、撮影=三佐和隆士

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