人口約230万人、東京・大阪・横浜に次いで日本で4番目に大きい都市として知られる名古屋市。全国屈指の環境問題への意識の高さが認められて、2019年には「SDGs未来都市」として選定され、誰ひとり取り残さない持続可能で強靭な都市の構築に取り組んでいる。その一端を担う「なごや環境大学」の取り組みについて、「なごや環境大学」実行委員会事務局の西裕史さんに話を伺った。
なごや環境大学は2005年に開学。立ち上げるきっかけのひとつとなったのは、1999年の「ごみ非常事態宣言」だ。増え続けるごみに対応するために、名古屋市は港区にある藤前干潟に新しい埋め立て処分場を作ることを検討。「しかし藤前干潟は渡り鳥の中継地であり、いろいろな生き物が生息していたため、市民からも反対の声が上がりました」と話す西さん。結局、藤前干潟をごみの埋立地にする計画は中止となり、名古屋市は「ごみ非常事態宣言」を発表。市民・企業・行政の協働で徹底したごみの分別を図るなど、環境への機運が高まり、なごや環境大学が創設されることになったのだ。
なごや環境大学は、大学教授やNPO代表らが中心となって実行委員会形式で運営されている。大きな特徴としては普通の大学ではなく市民、市民団体、企業、教育機関、行政が協働で運営する環境学習のネットワークとして活動を行っていることだ。実行委員会が主催する講座のほか、企業やNPO、市民団体が行う年間約130もの共育講座を開催。子供から大人まで興味がある講座を受講することができる。講座の内容はさまざまだが、いずれも「環境」や「SDGs」に紐づくものだ。「例えば脱炭素に関するテーマのものや、生物多様性や資源循環に関する内容など、内容は多岐にわたります」と西さん。「座学だったり、フィールドワークだったりそれぞれの講座企画者が工夫を凝らして、参加者に環境問題への意識を高めてもらう工夫をしています」。
開学して18年が経ち、受講者から企画者へとステップアップして講座を開く人もいるそうだ。「企画者も参加者も共に学び合うのがこの大学の特徴。学びを通じて一人でも多くの人が、環境問題に関心を持ってもらいたいと思っています」と西さんはいう。
ほかにも、なごや環境大学では地球環境から身近な環境までわかりやすくまとめた「なごや環境ハンドブック」を発行。SNSやホームページなども使って誰もが参加、参画できる情報を発信している。「大学の活動を通して、持続可能な社会を支える人と人の輪づくりを大切にしています」と西さん。さらにSDGsに対するムーブメントを起こすべく、これからも多様な活動を展開していく。