今、群馬県がおもしろい理由。山本一太知事が仕掛ける“群馬というコンテンツ”とその未来

2026年2月17日

エンタメがつくる、若い世代と群馬県の未来

ーー先ほどクリエイティブの話も出ましたが、特にこれからの若い世代は、仕事と暮らしを切り分けずに考えているケースが多い印象があります。そうした世代が、群馬県を選ぶ決定打になるのは、どんな点だとお考えでしょうか?

【山本一太知事】若い世代が群馬県を選ぶというのは、移住だけの話じゃないと思っています。ただ、北関東全体の傾向として、若い女性が東京に出ていってしまう、県外に転出するケースが多い。これは群馬だけじゃなくて、栃木も茨城も同じです。では、なぜデジタル・クリエイティブ産業なのか。群馬県のメイン産業は、やはり製造業です。太田市にはスバルがあって、自動車関連の部品をつくっている企業も多い。製造業は、群馬県の強みであり、誇りなんですよ。

GDPで見ても、製造業が占める割合は3割を超えています。普通の県だと2割くらいですが、群馬県は愛知県や広島県と同じように、自動車産業があるから3割を超えている。だから、製造業はこれからも大事にします。ものづくりは、群馬県の誇りです。

「もちろん農業も観光も、群馬県はすごく盛んなんです」とそのほかの産業も魅力と語る【撮影=阿部昌也】


ーーまずは、これまで積み上げてきた強みをきちんと認める、ということですね。
【山本一太知事】そう。ただ、それだけでいいのか、という話です。いわゆるトランプ関税の影響で、スバルも大変な時期がありました。やっぱり「一本足打法」はダメなんですよ。じゃあ、もう一本、柱をつくろうと考えたときに、もちろん農業も観光も、群馬県はすごく盛んです。そのうえで、若い人たちを引き付ける決定打として考えたのが「デジタル・クリエイティブ産業」なんです。

これは群馬県がつくった言葉で、デジタルとクリエイティブが融合している、という意味です。ウォーカープラスも、我々から見ればデジタル・クリエイティブ産業の一員なんですよ。今はもう、森羅万象がデジタルにつながっている時代で、出版社だってデジタルじゃないですか。そして、デジタル・クリエイティブ産業の中核は何かというと、IT企業だけじゃない。製造業だってクリエイティブだし、行き着くところはエンタメなんですよ、エンタメ。群馬県は、エンタメの拠点になろうと思っています。たとえば、どう考えても映画のマーケットって、圧倒的じゃないですか。

それと、これもあちこちで話しているんですが、今から半年ほど前の日経新聞に、とても象徴的な記事が出ました。日本を代表する自動車企業9社の時価総額を、エンタメ系の9社が初めて上回ったんです。ソニー、任天堂、バンダイナムコ、コナミ。日本の海外向けコンテンツ産業の市場規模は今、5.8兆円規模。半導体よりも上です。つまり、エンタメはもはや“おまけ”ではなく、日本の基幹産業のひとつになっているんです。

山本知事は、「群馬県は、コンテンツ産業やエンタメ産業の先頭を走りたい」と語尾を強めて語ってくれた【撮影=阿部昌也】


ーー数字で見ると、流れがはっきりしますね。
【山本一太知事】一方、自動車産業の海外売上は約20兆円。経産省は2033年にコンテンツ産業の海外売上を20兆円規模にする目標を掲げています。そうなれば自動車と肩を並べる。私は、日本の勝ち筋はここにしかないと思っています。そして、群馬県がそのエンタメの中核を担うべきだと考えている。そして、そこを先頭で走りたい。知事というのは、どの県でもそうですが、トップセールスマンの役割があります。東京に行って、いろいろな企業を訪ねて、「どうですか、群馬と何か一緒にやりませんか」と声をかける。群馬県とコラボできそうなところには積極的に足を運んでいます。

それから、エンタメ業界でいえば、やはり映画業界。そうした業界のトップにも実際に会いに行って、「群馬県のデジタルを一緒にやりませんか」とストレートに話しています。

実際、エンタメにここまで本気で取り組んでいるのは、群馬県くらいじゃないかなと思っています。だから、大型映画のロケも次々と入ってきている。ロケは本当に大事なんです。もともとハリウッドだって、最初はただの砂漠でした。天気がよくて撮影がしやすいから人が集まり、結果として産業になった。同じように、群馬県でもロケをきっかけにエコシステムをつくっていく。ヒット作がひとつ出れば、自然と回り始めると考えています。

若者はやっぱりエンタメが好きなんですよ。群馬県にエンタメ産業が根づけば、若い人、特に若い女性も「おもしろそう」と感じてくれるはずです。若者が残ると、「クリエイティブ」を大事にする人が増える。そうすると、農業も観光も製造業も、全部がクリエイティブになっていく。実は、あまり気づかれていませんが、『はたらく細胞』や『リボルバー・リリー』、『総理の夫』、Netflixオリジナルの『浅草キッド』も群馬県で撮影されているんです。

ーー話題作がたくさんありますね。
【山本一太知事】次々とロケの話が届くようになっています。高崎に「Gメッセ群馬」という施設がありますが、そこをある程度改修して、用途を変えていくプランがあります。オンリーワンの施設にしていこうという発想です。たとえば、映画のセットを組めるようにするとか、ほかにはない使い方をしていく。そうやって、デジタル・クリエイティブ産業をつくっていくんです。

高崎市にあるコンベンションセンター「Gメッセ群馬」【提供画像】


さらに、そのデジタル・クリエイティブ産業を支える人材育成の仕組みもつくる。「tsukurun」や「TUMO」といったデジタルクリエイティブに触れることができる環境を実際に持っているのも、群馬県だけです。こうした拠点を構え、環境を整えることで、県内だけでなく、県外からも若者が「群馬に来たい」と思ってくれるようになります。

さらに、「デジタルクリエイティブスクール」というものをつくろうと思っています。エンタメが成功するためには、やはりアカデミックな機関がないとダメなんですよ。南カリフォルニア大学の映画芸術学部のような最高峰のものはもちろんわかりやすいですが、こうやってエコシステムが回るようになったら、他県から「群馬県に来たい」という人が増えると考えています。そこが実は、観光も含めた、デジタル・クリエイティブ産業の狙いにつながるんです。

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