今、群馬県がおもしろい理由。山本一太知事が仕掛ける“群馬というコンテンツ”とその未来

2026年2月17日

ぐんまちゃんは、群馬県の最強IPになる

ーーさっき少し触れていただいた「ぐんまちゃん」について、あらためて伺いたいと思います。紅白歌合戦にも出場して、全国的な認知もさらに一段階上がった印象がありますが、知事としては、今どのフェーズに来ていると捉えていますか?

【山本一太知事】すごいでしょう、ぐんまちゃん。めちゃめちゃやばいですよ。まさか紅白歌合戦に出るとはね。この領域には、くまモンという“神”みたいな存在がいて、ずっと神だったんだけど、最近は“半分神”くらいの距離感になってきた(笑)。

関連グッズの売り上げでいうと、くまモンが1600億円を超えていて、ぐんまちゃんも600億円を超えた、というところまで来ています。最初は全く届かない存在だったけど、だんだん近づいてきた実感はあります。

群馬県のマスコット「ぐんまちゃん」【提供画像】


ーーすこし背中が見えてきた感じですかね。
【山本一太知事】いや、背中まではまだ見えないけど(笑)。でも、いろいろな形で追いつけると思っています。最大の戦略だったのが「アニメ化」。これ、自治体がよくつくりがちな適当なアニメじゃない。

ーーIPとして育てる覚悟があったわけですね。
【山本一太知事】やるなら、一流の人たちに、一流のアニメをつくってもらわなきゃ意味がない。そこで『クレヨンしんちゃん』の本郷みつる監督に来てもらって、声優も、群馬県出身の内田彩さんや小倉唯さんを含めて日本でも指折りのメンバーを集めた。最高の布陣でぐんまちゃんをつくりました。

1シーズンやったタイミングで、NHKの地方局がかなり力を入れてくれたんですよ。再放送もしてくれたし、あれは、ものすごい広告効果でした。

ーー作品の資産化は大きな価値になりますよね。
【山本一太知事】そうなんです。アニメになったおかげで、ロサンゼルスで毎年開かれているアニメエキスポには、自治体キャラクターの中でぐんまちゃんだけが行けるようになった。

それともうひとつが、「Crunchyroll(クランチロール)」です。ソニーの動画配信サービスで、日本のアニメやドラマを海外に届ける力を、ものすごく持っている。実際、ぐんまちゃんはクランチロールを通じて、世界の200近い国と地域で、8カ国語に翻訳されて配信されています。向こうから「ぜひやりたい」と言ってくれたんですよ。

これはもう、ずっと言っていることなんですけど、「IPビジネス」で稼ぐしかないと私は考えているんです。

もし、ぐんまちゃんがさらにブレイクしたら、膨大な売り上げが群馬県にもたらされるという【撮影=阿部昌也】


「なんでデジタル?クリエイティブ?横文字ばかりだ」と言われることもあるし、「エンタメって、結局は娯楽でしょう」と言われることもある。でも、私は「違う」と言ってきました。エンタメというのは、人々がワクワクするような新しい価値を創造すること。その意味では、世の中のあらゆることは、エンタメで動いていると思っています。

ーーここまでIPを真正面から語る知事は、かなり珍しいと思います。
【山本一太知事】もし、ぐんまちゃんがクランチロールで、あと3シーズンくらい続いていたら、もっとブレイクしていたと思うんですよ。仮に、ポケモンの100分の1、あるいはキティちゃんの10分の1でもヒットしたら、それだけで、群馬県には相当な財産がもたらされる。

企業誘致を一生懸命やっても、税収が増えれば、結局は国に持っていかれる部分もあるでしょう。でも、IPは違う。ぐんまちゃんのIPとしての権利は、すべて群馬県が持っているからです。群馬県がつくって、群馬県の判断で、いつでも使える。これは本当に大きな強みです。

だからこそ、ぐんまちゃんがブレイクすれば、そのリターンは、直接、群馬県の財政や未来に返ってくる。私は、そこに大きな可能性を感じています。

メディアとつくる、群馬県のこれから

ーーたくさんお話を伺ってきましたが、そろそろ最後の質問に移りたいと思います。ここまで、知事としての戦略的な発信の大切さや、コンテンツやクリエイティブによる新しい価値の生み出し方について伺ってきました。実際にお話を聞いていると、単なる広報というより、メディアそのものをどう設計するか、という視点が強いと感じます。今日のように、「ウォーカープラス」や「ニコニコ」といった民間メディアと、群馬県という行政がタッグを組むことで、これからどんなムーブメントを仕掛けていきたいとお考えでしょうか?

同じ発信者として知事の話に耳を傾ける浅野編集長。群馬県との関係性も今回の対談でより深まった【撮影=阿部昌也】


【山本一太知事】ウォーカープラスとも、もちろん組みたいし、ニコニコとはこれまでもずっと一緒にやってきました。昔はニコニコ動画で番組も持っていましたからね。民間メディアとの連携は、本当に大事だと思っています。

かつて1970年代に、角川春樹という天才が現れましたよね。その頃、日本に初めて「メディアミックス」という言葉が広がった。映画があって、テレビがあって、本があって、それを組み合わせて展開していく。「読んでから見るか、見てから読むか」というキャッチコピーは、まさにその象徴でした。

当時、流行語大賞はなかったですが、もしあったら、当時の角川書店は相当な数のキャッチコピーを生み出していたと思います。

ーーメディアミックスという言葉が流行る前から、みんなの中で自然に共有されていたコンテンツがあったということでもあるかもしれませんね。
【山本一太知事】そうですね。そして今は、間違いなく“新しいメディアミックス”の時代に入っている。雑誌もあれば、ネット番組もあるし、テレビのようなレガシーメディアもある。だからこそ、いろいろなメディアとコラボしながら、さまざまなチャンネルを通じて、必要な人に必要な形で届けていく。それが、これからの発信の在り方だと思っています。

紅白歌合戦を何十年かぶりにちゃんと見たんですよ。正直、かなり感動しました。福山雅治さんのメドレーがあったり、「これで郷ひろみ引退しちゃうのか?」なんて思ったり。かと思えば、久保田利伸さんのメドレーがあって、次は米津玄師さんの曲。最先端のものから、往年のスターまで、本当にてんこ盛りでした。

ーー世代もジャンルも、バラエティ豊かなラインナップでしたよね。
【山本一太知事】そう、全部入ってる。でも、それって何を意味しているかというと、昔みたいに「国民的スター」がひとりで全部を背負う時代じゃなくなった、ということなんですよ。

私が小学生の頃なんて、「紅白見た?」って聞かれて、「見てない」と言ったら、クラスで話についていけなかった。視聴率も7割とかで、紅白を見ていないと人と話ができない。そんな時代でした。でも今は違う。世界は、あの頃とは比べものにならないくらい細かく分かれている。たとえば、井上尚弥選手なんて、神様みたいな存在でしょう。でも職場で「すごいよね」と言ったら、「え?誰ですか?」って返ってくる。それが今の時代です。

ーーひとりのヒーローを、みんなが同時に共有する前提がもうないんですよね。
【山本一太知事】だからこそ、ウォーカープラスじゃないと届かない人たちがいる。あらゆるメディアを使って、その場所、そのニッチに、ちゃんと届ける。それが、これからの発信の在り方です。

今、世界一のポッドキャスターって呼ばれているジョー・ローガンという人がいるんですが、『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』という番組を持っていて、私もよく見ています。今の時代、本当に影響力を持っているオピニオンリーダーって、ああいう存在だと思うんですよ。必ずしもテレビに毎日出ているわけじゃない。でも、特定の分野で強い支持を集めている。その発信が、ものすごく効く時代になっている。

ーー行政の発信も、そうした“届く場所”を前提に設計する必要がある、ということですね。
【山本一太知事】そうそう。ウォーカープラスじゃないと届かないところ、というのも確実にある。だから今日も、喜んで話しました。好き勝手にしゃべってしまいましたけどね(笑)。

ーーいえいえ、とても楽しい時間でした。今日はありがとうございました。

群馬県知事の山本一太さん【撮影=阿部昌也】


対談を終えて

観光地としての魅力づくりにとどまらず、メディアやエンタメ、IP、人材育成までを一本の線でつなぎ、「群馬県という存在そのものをコンテンツとして捉える」。山本一太知事の言葉から感じたのは、行政の枠に収まらない発想と、現場に立ち続ける覚悟。その延長線上で、発信の形も、価値の届け方も今、大きく変わり始めている。リーダーの戦略と行動力のもとで、群馬県は、“選ばれる側”に回っていた。これからの群馬県がさらに楽しみになってきた。

インタビュー・取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=阿部昌也

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