近年のアウトドアブームを受け、登山やハイキングに興味を持っている人は多いのではないだろうか。実は筆者も、キャンプは何度も行ったことがあるが、登山は未経験。そこで今回は、登山地図GPSアプリ「YAMAP」の開発・運営などを行っている株式会社ヤマップの広報PRマネージャーの上間秀美さんと、YAMAP MAGAZINE編集部の編集長・石田礼さんに、登山やハイキングの楽しさや健康効果、登山の際の注意点、おすすめの山などを聞いてみた。
<YAMAPとは?>
電波がないところでも自分の居所がわかる登山地図GPSアプリ「YAMAP」の開発・運営を中心に、登山・ハイキングのウェブサイトの運営やコンテンツ提供、登山に付随したSNS、ハイセンスな山道具を扱うECサイト、山道具のレンタル事業、トラベル事業など山に関連する事業を包括的に行っている。
登山やハイキングの魅力や健康面で期待できることとは?
――お2人が思う、登山やハイキングの魅力とは?
【上間】自然に触れて開放感を味わえ、空気もおいしい、景色もきれい…となると、心身ともにリフレッシュできるというのがありますよね。普段デスクワーク中心で座ることが多かったり、頭が疲れていたりする場合は、休日に登山で身体も疲れることで「よく眠れるようになった」という方も。ちなみに私は、山で深呼吸するのが好きですね。
【石田】登山の醍醐味は個々によって違うと思うのですが、私は「達成感がわかりやすい」というのが登山のいいところかなと思います。道中は辛いと感じることもあると思いますが、「頂上まで来た!」という達成感が味わえるのがいいですよね。感覚が研ぎ澄まされて、ちょっとした風が気持ちいい、おにぎりがいつも以上においしく感じられる…など、些細なことに幸せを感じられる、というのも醍醐味のひとつかなと思います。
――「よく眠れるようになった」という方もいるとのことですが、登山やハイキングにおいて健康面で期待できることはあるのでしょうか?
【上間】2023年に弊社が九州大学と共同で行った「山を歩くことによる身体への影響」についての調査・研究では、習慣的に山を歩くことが、脳疲労の改善や血圧降下に寄与する可能性を示唆する結果となりました(※)。
※詳しい調査・研究の内容は、YAMAP MAGAZINE『習慣的に山を歩くことが「脳疲労」の改善に寄与する可能性|人と自然のウェルビーイングラボ 研究結果』参照
【石田】科学的データをもとに疲労しない山歩き、トレーニングなどを解説する「登山の運動生理学百科」(東京新聞出版局、山本正嘉 著)にも、さまざまな裏付けのもとで「登山は理想的な有酸素運動」であるということが書かれています。また、木々が発散する香りの成分「フィトンチッド」が心を落ち着かせるということも、科学的に検証され明らかになっています。
――ほかにも、何かありますか?
【上間】ダイエットを目的に始める人も多いと思います。実際に「スマートになった」というお声もあるんです。また、登山では(傾斜がある道を歩くので)平地より負荷がかかることから足腰がしっかりするので、健康寿命が延びることにもつながると思います。
【石田】ただ、登山(下山)後にビールやご飯がいつも以上においしく感じ、食べ過ぎてしまう人も多いです。
無事に帰ってくるためにも「登山計画」が大事
――登山には醍醐味がたくさんありますが、一方で注意することはありますか?
【上間】山は楽しいと思うのですが、「無事に行って帰ってくる」というのが一番大事です。登山の前に、まずはしっかりと「登山計画」を立てましょう。「登山計画」といっても難しく考えることはなくて、何時に山に入って山頂まで着いて、何時に下山…など、ルートと時間配分を決めればOK。ここでポイントなのが、行くメンバーの体力に合ったものになっているか、ということです。また、秋になると日が落ちるのが早くなるので、15時には下山するようにしたほうがいいと思います。
――「登山計画」については、行くメンバー以外に、家族などにも共有しておいたほうがよいのでしょうか?
【上間】そうですね。どこの山に行くとか、何時くらいに帰るというのを登山には行かないご家族に共有しておくのも、とても大事です。ちなみに弊社の登山地図GPSアプリ「YAMAP」では、設定すると登山計画がご家族にメールで送られます。また、「みまもり機能」では、何時に山頂に着いたとか何時に下山したとかの当日の情報もご家族に連携できるんです。
――登山の際はYAMAPのアプリをダウンロードしておくと便利ですね!ちなみに、ほかに登山の際のマストアイテムはありますか?特に、夏場にあるといいものを教えてください。
【上間】夏場は、水分はもちろんのこと、熱中症対策でスポーツドリンクや塩飴など塩分が入ったものを持参しましょう。サングラスや帽子などの日差し(日焼け)対策グッズ、虫よけスプレーなども用意していたほうがいいと思います。また、暑いと半そで短パンで行きたくなると思いますが、ケガ防止や虫よけのためにも、長袖長ズボンで行かれることをおすすめします。
【石田】最近では、日傘を持って歩くハイカーが増えています。私も夏場は、日傘や冷感タオルはマストアイテムとして持参しています。ちなみに、マストアイテムではないですが、最近の登山アイテムのトレンドをひとつ挙げますと、「ベアフットシューズ」が注目を集めています。裸足に近い感じで、地面を捉えているような感覚で歩くことができると人気です。VIVOやALTRAといったメーカーから、その流れが盛り上がっている感じです。少し登山に慣れてきたら、こういったアイテムを使ってみるのも楽しいかもしれません。
――夏場は、どのくらいの水分を持って行ったらよいのでしょうか?
【石田】登山中に補給すべき水分量は、先ほども話に出た「登山の運動生理学百科」の著者である鹿屋体育大学の山本正嘉教授が提唱している計算式で求めることができます。
脱水量(ミリリットル)=体重(キログラム)×行動時間(時間)×5
山本正嘉教授によると、給水量は発汗などによって失われる脱水量の70〜80%で、次のような式となります。
給水量(ミリリットル)= 脱水量 × 0.7〜0.8
例えば、体重50キログラムの方が5時間の行動をした場合の脱水量は、50キログラム×5時間×5=1250ミリリットル。1250ミリリットル×0.7~0.8=875~1000ミリリットル。つまり、体重50キログラムの方が5時間の行動をする場合は、500ミリリットルのペットボトル2本を持って行けばよいことになります。この計算式を参考にしながら、準備をして損はないので、水分は多めに持参することをおすすめします。また、頂上などに売店があって購入できることもありますので、そういうのも踏まえて持参されるとよいと思います。夏場は、ペットボトルをそのまま凍らせて持っていくというのも手ですよね。