福井の食と文化を味わう「月待の宴 朧〜OBORO〜」
丸岡城は、江戸時代以前に造られ、当時の姿で現在まで残っている現存12天守のひとつ。昭和23年の福井地震により石垣もろとも完全に倒壊したが、天守の材料や石垣などの主要部材の多くを再利用して昭和30年に修復修理され復活。重要文化財となっているこの貴重な場所を舞台に、2023年10月28日、29日に「月待の宴 朧〜OBORO〜」は開催された。
さっそくテーブルへ案内され、丸岡城を目の前に野点が始まる。抹茶と上生菓子をいただき、まずはほっと一息。
その後は丸岡城へ入っていき、敵襲に備えた階段の造りに感動しながら天守の最上階へと向かう。ちなみに城内の1階から2階に上る階段の角度は65度、2階から3階部分で67度だという。
お天守杯
普段は飲食禁止の天守最上階で、食前酒とアペタイザーが振る舞われる「お天守杯」。かつての城主も愛したであろう絶景を前に、この特別な体験に乾杯をした。
一筆啓上
日本一短い手紙といわれる「一筆啓上」は徳川家康の家臣、本多作左衛門重次が妻へ宛てた「火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」とシンプルながらも想いが込められた手紙がルーツとなっており、丸岡町の文化として根付いている。今回はその一筆啓上を、神聖な天守で月の光に照らされながらしたためる。特別な場所、静寂、雰囲気も相まって思い出に残る体験となった。
一流シェフによる城郭ダイニング
城下に降りたら、いよいよディナー。この日限りの幻の野外レストランにて、地元の食材を使った福井のトップシェフによるフルコースが振る舞われた。料理は、フレンチ料理をとおして福井の文化、伝統を表現する「cadre(カードル)」と、ミシュランガイドで2つ星を獲得した金沢のスペイン料理店「respiracion(レスピラシオン)」のスタッフが手掛ける。
丸岡のカボチャや鹿肉、三国港の塩ウニに甘エビと、新鮮な福井の食材をふんだんに使用した料理の数々は、「黒龍」をはじめとした地酒との相性も抜群。お腹だけでなく心も満たされる特別なひとときを堪能した。
天守を彩るプロジェクションマッピング「丸岡城×ネイキッド ヒカリ結び」
ツアーのあとは、ほぼ毎日上映されている、クリエイティブ・プロダクション「NAKED(ネイキッド)」が手がけるプロジェクションマッピング「ヒカリ結び〜伝説編〜」を鑑賞。丸岡城にまつわる伝説(お静人柱伝説、雲の井竜神伝説)をモチーフに組み立てられたストーリーが、最先端の技術で繊細に描かれている。上映は原則毎日、20時00分~、21時00分~の計2回。上映時間は約15分間で、丸岡城天守閣の北東側壁面に投影される。上映する映像は季節ごとに入れ替えているそうだ。
初めての試みとなった丸岡城天守を舞台とした「月待の宴 朧〜OBORO〜」。本ツアー実施の経験を活かし、坂井市は今後もさまざまな企画を考えていきたいとのこと。
2024年3月16日に開業を予定している北陸新幹線により、より福井県へアクセスしやすくなる。この機会に、食だけでなく、歴史や文化、自然と魅力あふれるスポットが盛りだくさんの福井県坂井市に一度足を運んでみてはいかがだろうか。
取材=浅野祐介、文・撮影=山本晴菜