新たな食文化創造へのチャレンジ
環境に優しく栄養価も高いBG無洗米だが、「米は研ぐもの」という概念を払拭するのは、並大抵の苦労ではなかったと担当者は振り返る。「“無洗米は手抜き”“研ぎ汁は海や川の生き物の栄養になるはずだから流しても問題ない”と考える人も多く、発売当初はなかなか認めてもらえませんでした」。マイナスからのスタートは、新たな食文化の創造への挑戦でもあった。「生協さんが商品に対して理解を示してくれたおかげで、ずいぶん普及されました」
またSDGsの意識が高まりつつあったのも追い風に。「現在、全国50工場で当社の無洗米機が使われ、国内の無洗米の約7割が当社の精米機械によって作られているといわれています。SDGsへの貢献は、BG無洗米を使ってくださる企業や消費者、飲食店といった皆様方があってこそだと思います」
栄養価の高い無洗米「金芽米」が誕生
米は玄米より白米のほうが食べやすく、食味がいい。しかし、精米すればするほど栄養価が減っていく。このことに着目した雜賀氏は、なんとか栄養価が高いままおいしいBG無洗米ができないかと研究、健康に有益な亜糊粉層と呼ばれる部分を米表面に残す精米技術を開発した。さらに、研ぎ洗いにより、せっかく残した亜糊粉層が流れないようにBG無洗米加工を施したのが、おいしく栄養豊富な「金芽米」だ。
金芽米は亜糊粉層がたくさん水を吸うため、通常より米の量を減らしても普通の白米と同じ量のご飯が炊きあがる。また冷めてもおいしい。さらに米粒の量自体が減ることで糖質もカロリーも白米より低いとあって、現在は大手弁当チェーンや企業の社員食堂などで採用されている。
「金芽米」「金芽ロウカット玄米」で医療費削減に貢献
さらに、金芽米よりもっと米の栄養を引き出したものを、と2015年には「金芽ロウカット玄米」を発表した。玄米は白米に比べてボソボソと硬い食感で、ヌカの匂いが気になるという人も多い。東洋ライスの研究により、この食感が玄米の表面についた防水性の高い“ロウ層”にあると判明。卓越した加工技術でロウ層だけを均等に削り取った玄米の開発に成功した。
「金芽ロウカット玄米」は浸水時間も1時間でよく、消化性に優れ、玄米と同じ栄養価で白米のようにおいしいという特徴がある。このことが評価され、2018年より4年連続で玄米カテゴリー第1位を獲得し続けている。
さらに、協力会社3社で金芽米や金芽ロウカット玄米を実際に食べ続ける健康調査を3年間かけて実施。その結果、各社とも年間医療費が約4割削減した。おいしく体にいい米に対する飽くなき研究は、人々の健康への貢献はもとより、公的医療費の削減という社会貢献にもつながっている。