病気と闘う子供と家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」とは?

2022年11月10日

最も新しい施設「にいがたハウス」には約300名のボランティアがいる


前述の通り、日本の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は札幌、仙台、栃木、埼玉、東京・世田谷、東京・府中、東京・文京、名古屋、新潟、大阪、神戸、福岡に12ハウスある。なかでも最も新しく、日本海側では初となるのが新潟にある「ドナルド・マクドナルド・ハウス にいがた(以下、『にいがたハウス』)」だ。

「にいがたハウス」外観

「にいがたハウス」ベッドルーム

「にいがたハウス」プレイルームとダイニング


新潟大学の病院地区構内(旭町キャンパス)に、新潟大学および公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン(以下DMHC)が共同で設置し、DMHCが運営を行っている。

「にいがたハウス」には約300名のボランティアがおり(2022年8月時点)、2週間に1度の頻度で1回あたり3時間の活動ペースでハウスに来て、チェックイン/アウトの手続き、ベッドメイキング、共有スペースの清掃などの活動を行い、ハウスに滞在する家族の支援をおこなっている。

この約300名のボランティア全員が新潟県内在住で、うち44%がハウスが所在する新潟市中央区に住んでいる。他の区と合わせると、全体の9割以上を新潟市内の人が占めており、「地域の人たちに支えられている」のが特徴だという。

活動における有意義な点と難しい点とは?

「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の設立当初は昨今のSDGs、サステナブルといった概念もなく、成り立ち自体はこれらにリンクさせたものではなかったものの、特にSDGsの17の目標のうち「3.すべての人に健康と福祉を」には長きにわたって多大な貢献を続けてきたと言えるだろう。DMHCの担当者は、活動における主な有意義な点として、以下の3つを挙げてくれた。

【活動における有意義な点】

・皆さまの善意によって成り立っており、集まったご支援が、貴重な運営資金という価値に加え、「社会からの応援の気持ち」という価値を持って、病気と闘うお子さんとそのご家族に役立てられること。
・運営資金の調達が、病気の子供とそのご家族を社会全体で応援していくという意識・文化の醸成にも繋がること(寄付までの過程で、活動への理解が促進される)。
・熱い想いを持った支援者の方が多く、継続的・多角的に支援くださったり、支援の輪を広げようと主体的に行動してくださる点は、大変有ありがたい。
(例:マンスリーサポートなどの定期的な寄付のほか、ボランティアやチャリティイベントへの参加など、寄付・募金以外のかたちでも支援くださったり、支援の輪を広げようとSNSで情報シェアや呼びかけをしていただけることもある)

他方、運営に際しては難しい点も、少なからずあるという。

【活動における難しい点】

・皆さまのご支援なくしては運営が成り立たないこと。
・商品の販売などと違い、支援者が必ずしも直接的な便益を得られるわけではなく、その中でもご支援をいただくためには、取り組みの意義をよりしっかりとお伝えし、理解を得ていかなければならないこと。
・寄付という手段は、コロナ禍など社会状況の影響を受けやすいこと(実際に『にいがたハウス』建設を目的とした募金活動でもコロナ禍によって苦戦した時期があった)。
・ボランティアの登録者数も、コロナ禍の影響で以前よりは減少してしまっていること。

「ファミリー・センタード・ケア」の実現に貢献

難しい点をも一つひとつ乗り越えながら、「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は今日も運営を続けており、病気と闘う子供たちとその家族の支援を行っている。その自負についても担当者に聞いてみた。

「病気と闘うお子さんとそのご家族が近くにいられるための滞在場所およびサポートの提供を通じて、『ファミリー・センタード・ケア』の実現に貢献していると自負しております。

『ファミリー・センタード・ケア』は、患者とその家族を中心とした医療の在り方で、治療やケア方針の意思決定、日常の付き添いなどに、家族が積極的に参加するものです。

この実現には、医療従事者が医療の側面から患者と家族を支えるとともに、お子さんに寄り添う家族がより良いコンディションで側に居られるよう、地域社会で支援していくことが必要です。

『ドナルド・マクドナルド・ハウス』では、こうした医療従事者とは異なる側面からの支援において、皆さまからのご協力のもと、大きな役割を果たしているのではないでしょうか」(DMHC・担当者)

強い思い、自負に裏付けされた「ドナルド・マクドナルド・ハウス」だが、その試みはもちろん、今後も多くの支援を元に行っていくという。

「既存ハウスの運営のほか、国内にはまだハウスが必要とされている地域があるため、そうした地域へハウスの新設・運営を行ってまいります。直近では、2024年に静岡県にハウスを竣工予定です。

そして、DMHCとしては『ドナルド・マクドナルド・ハウス』事業以外にも『シェアハートフォーシックキッズ』という、入院している子供たちのQOLを向上させ笑顔を届ける事業を2022年4月より始動しました。

この事業はハウスのないエリアでも入院中の子供とそのご家族を支援することが目的で、ハウス事業と並行してこちらにも注力し、より幅広い支援を行っていきたいと考えております」(DMHC・担当者)

また、「シェアハートフォーシックキッズ」事業の1つである「ハートフルカート」という取り組みにも触れておきたい。「国立成育医療研究センター」「兵庫県立こども病院」「自治医科大学とちぎ子ども医療センター」「京都大学医学部附属病院」「京都府立医科大学附属病院」など計10カ所で、入院中の子供および付き添う家族が必要としている日用品を、カートを使って無償で配布する活動も行っている。こちらもハウス事業以外の試みで、各所の病棟に明るい光を灯す有意義な活動と言って良いだろう。

「ハートフルカート」を囲む、子供たちその家族、病院関係者


1人でも多くの人に「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を知ってほしい

「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を利用する家族


最後に「ドナルド・マクドナルド・ハウス」をまだ知らない人へのメッセージももらった。

「『ドナルド・マクドナルド・ハウス』の運営は、皆さまのご支援なくしては成り立ちませんが、日本での認知はまだ海外よりも低いのが現状です。

そのため、まずはハウスの存在や我々の活動を1人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。

そして知っていただいたその先に、何か1つでもご支援の気持ちを行動に移していただけたら嬉しいです。

支援の仕方にはさまざまな方法があり、マクドナルド店舗での募金をはじめとした寄付以外にも、施設が必要としている物品をご提供いただいたり、ボランティアに参加していただいたり……情報をSNSでシェアしていただくことも、支援の輪を広げることに繋がります。

ぜひ、ハウスのことを知り、ご自身にできる方法でのご支援をいただければ幸いです」(DMHC・担当者)

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